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マーレ:ディーゼルエンジンを水素エンジン化するには何が必要なのか?

【人とくるまのテクノロジー展2023】

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マーレ:ディーゼルエンジンを水素エンジン化するには何が必要なのか?

自動車部品サプライヤーのマーレは、日本においては1968年のイズミ工業との技術提携をきっかけに事業を開始。現在では、多くの乗用車メーカーから商用車メーカー、さらには建設機械・農業機械メーカーにも製品を納入している。そんなマーレが展示していたのは、ディーゼルエンジンをベースに水素エンジンに改修するための要素部品だ。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

乗り物の脱化石燃料化は、BEV一辺倒では容易には達成できない。重機は充電設備から遠く離れた場所で稼働する場合が少なくないからBEV化は非現実的だ。航続距離が長い大型商用車は、エネルギー密度が高くコンパクトに貯蔵できる水素の利用が理にかなっている。それが最近、水素エンジン搭載車の実証等が立て続けに発表される理由だ。大型商用車向けとして水素エンジンが実用化され、それに向けたインフラが整えば、乗用車への展開が進むかも知れない。

さてマーレが展示していた、ディーゼルエンジンを水素エンジン化するための要素部品とは、ピストン、ピストンリング、ピストンピン、バルブ、バルブシートメタル、バルブガイド、それにハイプレッシャーインパクターである。

ピストンはアルミ製だが、これは熱対策だという。ピストンヘッドは大きく凹んでいる。これでも圧縮比は11程度あるという。ディーゼルエンジンを水素エンジン化すると、火花点火化される。そのうえで燃焼を制御するのに、この凹んだピストンヘッドで丁度良い圧縮比が実現する。ピストンランド部も形状に工夫が施されているという。

またピストンを鉄からアルミ化することで強度が下がるため、ピストンピンはブッシュで補強されている。

興味深かったのは、水素エンジン化で問題となるのはブローバイである。という説明だ。

「水素は燃えやすい性質だから、4%よりも濃くなると異常燃焼を起こしてしまいます。そこで二つの対策を合わせて講じます。一つはハイプレッシャーインパクターを搭載して電動ポンプでクランクケースからブローバイを吸い出す仕組みです。もう一つは、クランクケースに穴を開けて外気を導入すること。これによりブローバイの水素濃度を常に4%よりも薄い状態にします。こうしてブローバイガスを吸気系に戻していますが、水素濃度はセンサーで見ているんですよ」

このハイプレッシャーインパクターはディーゼル用セパレータを流用しているから、もちろんオイルミスと分離も担うことができる。

もう一つ興味深いのはバルブ周辺の潤滑について。

「バルブ、バルブシート&ガイドが水素エンジンではドライ潤滑になることから、特別な対策が施されています。弊社はCNGエンジンも行っていますから、その知見を活用して対応しています」
と説明していただいた。

実際にディーゼルエンジンを水素エンジンするには、それなりの知見が求められると実感させてくれる展示であった。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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