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IHIと秋田大学、航空機・車載システム向け超高速モータ用高磁束プラスチック磁石ロータの試作に成功

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IHIと秋田大学、航空機・車載システム向け超高速モータ用高磁束プラスチック磁石ロータの試作に成功

IHIは6月15日、秋田大学と共同で開発している航空機・自動車向け超高速モータ用高磁束プラスチック磁石ロータ(回転子)の試作に成功したことを発表した。IHIと秋田大学が、秋田県産業技術センターの支援を受けた秋田県内の企業である宮腰精機、フルヤモールド、小林工業と連携し、開発に取り組んでいた。

高磁束プラスチック磁石ロータは、溶融したプラスチックに粉末磁石を混合した複合材料を射出成形すると同時に、成形してできたプラスチック磁石をハルバッハ配列(※1)と同様に磁場配向(※2)することで磁石の利用効率を最大化し、モータの大出力(高効率)化、小型化、軽量化を実現するもの。磁石を射出成形で製造することにより機械加工を削減し、製造時間の短縮とコスト削減が期待できるという。

射出されたプラスチック磁石を高強度のカーボンファイバー複合材(CFRP)リングで覆うことで、毎分10万回転を超えるモータ回転数に耐えられる構造になっている。

プラスチック磁石ロータ構造
プラスチック磁石ロータ構造
超高速モータ(適用例)
超高速モータ(適用例)

完成した試作品は、電動化システム共同研究センター(※3)で特性評価を行った結果、設計上の磁力が100%磁石で占められる従来の焼結磁石製ロータと同等以上の性能が得られることを確認。この成果は、ほぼ50%をプラスチックが占める磁石で従来品と同等な出力を達成できることから、レアアースの使用量の削減にもつながると期待を寄せる。

※1:ハルバッハ配列
永久磁石の特別な配置方法。一般の磁石配置では両面は同じ磁力となっているのに対し、配列の片側の磁力を増強し、反対側の磁力をほぼゼロにすることで、磁石の利用効率を最大化できる。

※2:磁場配向
磁石製造の成形工程で磁石材料に磁場をかけながら成形し、材料の結晶配列方向をそろえること。それにより、成形後の磁石において特定方向の磁力を強くできる。今回のようにハルバッハ配列と同様に配向することは極異方性配向と呼ばれる。

※3:電動化システム共同研究センター
秋田大学が内閣府「地方大学・地域産業創生交付金」の交付事業を受け、秋田県立大学と共同で運営する電動化システム共同研究センターを2021年4月に設置。

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