横浜ゴムと信州大学、高分子微粒子を活用した亀裂が進みにくいゴム材料を開発

今回の研究は、重合方法の一つとして知られるミニエマルジョン重合法（※2）によって合成した高分子微粒子（以下、微粒子）およびその微粒子分散水溶液（以下、分散水溶液）を用い、分散水溶液から水を蒸発させて作製した微粒子フィルム（※3）（ゴム材料）を活用して実施した。

この微粒子フィルムは、超分子化合物（※4）として知られるロタキサン分子（※5）を微粒子の内部に架橋剤として導入することで、補強剤などその他の添加剤を一切使用せずに、切れ目から亀裂が広がりにくい性質を持たせることに成功。ゴム材料としての高い伸縮性も維持している。

微粒子のみから作製した微粒子フィルムは、環境負荷の小さい水とエタノールの混合溶媒に浸すだけで微粒子個々に分解できる。その後、揮発性の高いエタノールのみを蒸発させて元の微粒子と水から成る分散水溶液に戻せるため、同じ微粒子フィルムを簡単に劣化なく再生でき、サーキュラーエコノミーへの貢献にも期待を寄せる。

今回の研究の成果は、米国化学会のLangmuir誌に6月17日（日本時間）に掲載された。同社は、研究で得た知見をもとにさらに研究を進めることで、人や環境にやさしく、より安全で耐久性の高いタイヤやゴム製品の開発につなげる考え。

※1：高分子微粒子とはマイクロスケール（1マイクロメートル＝100万分の1メートル）より小さい高分子の粒子。
※2：エマルジョン重合法の一つで、超音波を照射することによってモノマーと開始剤を水中内で微粒子化した後に重合する方法。
※3：微粒子フィルムは高分子微粒子の集合体。
※4：複数の分子が比較的弱い相互作用によって秩序高く会合して形成される分子集合体。分子を集合させることで、分子の機能を制御したり、新機能を発現したりできる。
※5：ロタキサン分子は環状分子に軸分子が貫通し、その環状分子が軸分子から抜けないようにした構造を有する分子集合体。