NTN、EV向けに高効率・低振動ドライブシャフトの提案を開始。EVに最適な等速ジョイント(CVJ)を組み合わせ航続距離・乗り心地にも貢献
NTNは、高効率固定式等速ジョイント「CFJ」と低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」の組み合わせにより、世界最高水準の高効率・低振動を実現したドライブシャフトを電気自動車(EV)向けに提案を開始することを発表した。高効率やNVH(騒音・振動・ハーシュネス)などが求められるEVに本商品の提案を進め、航続距離の延長と乗り心地の向上に貢献する。
ドライブシャフトは、モータなどパワートレインユニットの動力(トルク)をタイヤに伝える部品で、タイヤ側の固定式CVJとパワートレイン側のしゅう動式CVJ、これらをつなぐシャフトで構成される。
近年、開発・普及が進むEVは、航続距離の延長を目的に省電費化が進められている。しかし、大型バッテリーの搭載や居住空間の確保を目的とした駆動ユニットのレイアウト変更に伴って、ドライブシャフトの搭載角度(CVJの取付け角度)が大きくなると、トルク損失率が増加する傾向にあり、大きな取付角度においてもトルク損失率の低減が求められる。また、動力がモータに置き換わることでさらに自動車の静粛性が進み、ドライブシャフトのNVH改善ニーズが高まっている。
高効率・低振動ドライブシャフトについて
NTNは、こうしたニーズに対応し、高効率固定式等速ジョイント「CFJ」と低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」を組み合わせたドライブシャフトをEVに最適な商品として提案している。「CFJ」はトルク損失率の低減(高効率)、「PTJ」は振動につながるスライド抵抗の低減において、それぞれ世界最高水準の性能を誇るCVJである。これらを組み合わせることで、EVの航続距離の延長と低振動・静粛性といった特有のニーズに対応が可能とされる。
NTNの従来品から、「CFJ」と「PTJ」を組み合わせたドライブシャフトに置き換えた場合、トルク損失率を70%以上低減することが可能で、電費は3.19%の改善効果が得られる※1, ※2。なお、エンジン車におけるCO₂排出量削減効果は1.71g/kmとなります※1, ※3。
高効率・低振動ドライブシャフトはすでに一部のSUV向けに量産を開始しており、現在、電動車向けでも多数の引き合いをいただいている。NTNはリヤ用小型・軽量ドライブシャフト「Rシリーズ」や小型・軽量を特長とするCVJの「Eシリーズ」に加えて、本商品をEVやハイブリッド車(HEV)など電動車向けに航続距離の延長や乗り心地の向上に貢献する高付加価値商品としてグローバルで提案を加速する。
NTNは、本商品を5月22日~24日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー 2024 YOKOHAMA」に出展する。
※1 固定式CVJに「EBJ」、しゅう動式CVJに「EDJ」を用いた従来品との比較
※2 車重1,500kg・電費155Wh/kmの車両を仮定し、WLTP条件で走行させた場合(CVJ取り付け角度:9度)
※3 車重1,500kg・燃費17.6km/Lの車両を仮定し、WLTP条件で走行させた場合(CVJ取り付け角度:9度)
高効率固定式等速ジョイント「CFJ」について
「CFJ」は従来の基本構造を大きく変え、内部部品にかかる力を相殺する独自の「スフェリカル・クロスグルーブ構造※4」を採用した固定式CVJである。本構造の適用により、トルク損失率を従来品比で50%以上低減、さらに高作動角時においてもトルク損失率の増加を大幅に抑えることが可能。世界最高水準の高効率で、国内外の自動車メーカ向けに多数の採用実績を誇る。
低振動しゅう動式等速ジョイント「PTJ」について
作動角が大きくなった場合にも、内部部品のローラカセットの傾きを抑える独自の「ピロージャーナル構造」を採用したしゅう動式CVJ。振動につながるスライド抵抗を従来品比で50%以下に低減するなど世界最高水準の低振動を実現しており、静粛性を重視する高級車や大きな作動角を取るSUV向けで豊富な量産実績を誇る。
※4 ボールが通る転動溝を内輪・外輪で互いに交差させた構造。隣り合う転動溝を互い違いに傾斜させることで、ボールが内部部品を押す力の向きを交互に振り分け、互いに相殺させる。