2種のうしろ足を持つBYDドルフィン:マルチリンク採用車の乗り心地はどうか
BYD・ドルフィンに試乗する機会をいただけた。なんと電池総電力量の多寡によってリヤサスペンションを作り分けているという。今回試乗したロングレンジ版のマルチリンク採用車を詳細に眺めてみた。
電池を得意とする会社が電気自動車まで作ってしまった。その成り立ちに驚くとともに、正直なところ「でも自動車となったらさすがに成立が難しいのでは」という感想である。あいにく、日本上陸第一弾のATTO3には未試乗であり、今回初めてBYD車に乗る体験となった。幸いにも今回の試乗車・DOLPHINのほうがサイズとしては小さい。個人的にBEVは小さいほうが難しいと考えていたので好都合である。
プレゼンテーションでもやはり、小型であることを強く訴求。日本市場への展開にあたっては立体駐車場に合わせて全高を1550mmに収め(ストックは1570mm)、ウインカーレバーを右側に改めたという。急速充電方式についてはCHAdeMOに対応、インフォテインメントシステムにおいても日本語音声認識とした。さらには誤発進抑制システムの採用、日本市場のために手間をかけた印象だ。
また、積載バッテリー量によってリヤサスペンションを使い分けているとの驚きの発表。大きくなったバッテリー筐体を収めるのにTBAのピボットスペースが確保できなくなったという判断だろうか。今回はロングレンジ版のマルチリンク採用車の試乗だったが、ぜひこの普及版も試してみたい。
試乗において何より確かめたかったのは回生ブレーキのフィーリング、とくに完全停止直前の摩擦ブレーキへの受け渡しがスムースかどうか、であった。クリープで進ませてブレーキペダル、という状況では一部「あれ?」というシーンもあったものの、市街地走行における制動の様子はきわめて滑らかだった。一方で20km/h程度までの極低速において少々フワフワした車両挙動があったように感じたが、このあたりも日本の小型車に似せてきたということだろうか。だとしたら相当なやり手である。
暖房時の航続距離、急速充電時の所要時間×充電率などは確かめられなかったが、リン酸鉄型LiBは「強いセル」のイメージ。BEVの弱点を解決できるか。