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【海外技術情報】バスケットボールサイズで25馬力を発生するロータリーエンジンは2ストロークディーゼル!

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【海外技術情報】バスケットボールサイズで25馬力を発生するロータリーエンジンは2ストロークディーゼル!

2023年1月、マツダが発電用ロータリーエンジンを搭載した「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」を世界初公開したことが話題になったが、アメリカで極めてコンパクトなロータリーエンジンの商品化を目指す動きがある。
TEXT:川島礼二郎(Reijiro KAWASHIMA)

ロータリーエンジンの商品化を進めるのはリキッドピストン

ロータリーエンジンの商品化を目指すと発表したのは、コネチカット州ブルームフィールドを本拠地とするテクノロジースタートアップ企業であり、スケーラブル(1~1,000馬力以上)かつコンパクトかつ高性能な燃焼エンジンの開発を進めているリキッドピストン社である。

2003年の創業以降、ビジネスコンテストでの受賞やアメリカ陸軍からの助成を経て、2010年には20馬力の自然吸気ロータリーディーゼルエンジンの試作品を製造した。

2016年には振動がほぼゼロで静かな『X Mini』という70ccロータリー4ストロークエンジンを開発した。商品化こそ手間取っているものの、その技術力には注目が集まっている。

水冷2気筒2ストロークロータリーディーゼルエンジンを開発中

商品化を目指すと発表されたのは、25 馬力、2気筒の『XTS-210』エンジン。『X-Engine』と名付けられたプラットフォームに基づいて設計された、2ストローク、過給機付き、210ccのロータリーエンジンである。

一般的なディーゼルエンジンと比較すると、『XTS-210』は同等の出力を維持しながら、サイズと重量を約80%も削減できる。アメリカ陸軍用アプリケーション向けのプロトタイプエンジンを開発するために、リキッドピストンはアメリカ陸軍と900万ドルの開発契約を締結している。

『XTS-210』エンジンは1950年代に開発された伝統的なヴァンケルロータリーエンジンの燃料効率、潤滑、および燃料タイプの制限に対処できる、とリキッドピストンは主張している。

『X-Engine』は設計がシンプルであり、主要な可動部品はローターとシャフトのみ。過給により最大1barのブーストを追加して、2ストロークとして動作する。ローター1回転あたり6つの燃焼イベントを生成して、ほぼバスケットボールのサイズの軽量なパッケージからスムーズなパワーを提供する。

『XTS-210』は以下の4つの市場要件に対応する。

・ 同程度の出力のディーゼルエンジンと比較して、出力対重量(比出力)および出力対体積(出力密度)は5倍、トルク対重量(比トルク)は最大3倍。
・ エンジン単体とハイブリッド電気モードの両方で動作するように、極めてコンパクトに構成可能。最大7,000rpmで動作し、小型軽量の電気機械に適合し、発電とハイブリッドアプリケーションのモビリティを向上させる。
・ 水冷式であり、火花点火または圧縮点火のいずれにも対応する。当初から軍用グレードの堅牢性を実現するように設計される。
・ 多燃料機能:初期のテストでは防衛および航空宇宙用途向けのJP-8/Jet-A燃料に焦点を当てている。
・ 『XTS-210』は移動式発電、垂直離着陸機および小型無人航空機システムの主要またはハイブリッド電気推進力を含めた、軍用または商用の重燃料アプリケーションに対応する。 

リキッドピストンの共同創設者兼CEOであるアレック・シュコルニク博士は以下のように述べた。

「『XTS-210』の重量、サイズ、それに複数燃料への対応能力は、システム本体の能力向上と実用性向上を実現します。軍隊に「移動中の電力」が要求される時代において、サプライチェーンとロジスティクス構築の負担を軽減することができる。このニーズは今後、ますます重要になって行くでしょう。
当社は様々なタイプのロータリーディーゼルエンジンを使用した20年間にわたる熱力学研究を経てきましたが、この最新世代の『X-Engine』モデルの市場投入を計画できることを嬉しく思います」

リキッドピストンは2024年に『XTS-210』プロトタイプを米陸軍に納入することを目標にしている。『XTS-210』開発のための900万ドルの補助金のほかに、リキッドピストンはハイブリッド式ドローンに電力を供給するための170万ドルの陸軍契約も締結しているという。

参考:リキッドピストン https://www.liquidpiston.com/

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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