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太陽電池の変換効率33.36%を達成、車載用パネルへの展開を期待

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太陽電池の変換効率33.36%を達成、車載用パネルへの展開を期待

TEXT:MFi PHOTO:NEDO/Sharp

BEV:バッテリー式電気自動車を再生可能エネルギーによって充電し、グリッドへの負担を減らす。理想的な運用だが、実際には風力発電の稼働率や太陽光発電の効率などの問題が山積しているのが現状である。そのような状況下で、シャープエネルギーソリューションがこのたび、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の太陽光発電主力電源化推進技術開発事業において、世界最高レベルのエネルギー変換効率を誇る化合物・シリコン積層型太陽電池モジュールの開発に成功した。リリースによれば「化合物2接合型太陽電池セルをトップ層に、シリコン太陽電池セルをボトム層に配置した新構造により、さまざまな波長の光を効率的にエネルギー変換できるほか、従来の化合物3接合型太陽電池モジュールの3分の1以下に薄層化されることにより材料コストの低減を実現」できるという。

エネルギー変換効率33.66%を達成したモジュール
インジウム/ガリウム/リンをトップ層に、ガリウム/ヒ素をボトム層とする2接合型の太陽電池モジュールとした。面積は775cm2、最大出力は31.51W。2016年の31.17%、2022年の32.65%、そして今回の33.66%と効率を上げ続けている。

今回は775cm2の実用サイズモジュールにおいて変換効率33.36%を達成した。同社は2022年6月にも本事業で化合物3接合型太陽電池モジュールで32.65%の世界記録を打ち出していたが、今回はさらにその成績を上回った格好だ。意義は、なんといっても移動体用の太陽電池であること。先立って行なわれた化合物3接合型での実証実験では0.03mmの薄いフィルム状とすることで車体の曲面に沿わせることができ、約1,150Wの低確発電電力を実現するなど、ユーザーの使途によっては外部電源からの充電回数をゼロにすることもできると試算していた。今回の化合物2接合型の性能ジャンプアップによってさらにその期待が高まる。

NEDOの試算による太陽光発電の効果
日本各地のドライバー5000名から年間走行データをヒアリング、気象データの解析と併せて太陽電池発電でどの程度の走行ができるかをシミュレーションしたところ、約4割の車両が外部充電することなく太陽光発電だけで走行できることがわかったという。
システムを搭載したPHEV実証車両
プリウスPHEVのルーフ、フード、バックドアに3接合型モジュールを搭載した、トヨタ×NEDO×シャープによる試験車両。変換効率は30%超で、定格発電電力は約860Wまで高めた。バッテリー総電力量は8.8kWhと、ストックのまま。
システムを搭載したBEV実証車両
日産のeNV200をベース車として、ルーフに6モジュール、フードに2モジュール、リヤゲートに2モジュールを設置した試験車両。こちらも変換効率31.17%の3接合型太陽電池モジュールを使用、定格発電電力は1150Wとした。

今回の2接合型太陽電池モジュールは従来の3接合型比で1/3の薄層化、それに伴う材料コストの低減が期待されるという。通勤後に停め置いた状態で充電、帰宅という短距離サイクルなら外部充電レスの電気自動車が実現するかもしれない。完全に自己完結する夢のBEVができあがるか。まさに夢の自動車である。

著者
Motor Fan illustrated

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