日立、生成AIで車載カメラ映像から説明文を作成する技術を開発。車載ソフト開発を効率化

自動車メーカーや車載器ベンダーでは、車載カメラの映像データや走行データなど、車両から収集したデータを活用するデータドリブンの車載ソフトウェア開発が進んでいる。

同技術は、生成AIを用いて車載カメラの映像から交通状況に関する高精度な説明文を自動生成するもので、ソフトウェア開発の効率化に貢献するという（特許出願中※1）。

ADAS（先進運転支援システム※2）やAD（自動運転※3）などのソフトウェア開発では、開発者が走行試験時や実車での走行時の映像データから、教師データ（※4）や不具合事象が発生しているシーン、製品テストに必要なシーンを探索し、さらに車両の走行データなどをリンクさせて分析用データを準備する。必要なシーンを抽出する作業は、膨大な映像データを再生して行われており、長時間を要するという課題がある。

一般的に映像（画像）の説明文の生成には、AIなどのデジタル技術が用いられることがあるが、一般道と高速道路の判別や、歩行者の状況や周囲の自動車の状況特定など、交通状況の詳細を捉えた説明文の生成が困難だという。同社は、自動車分野の豊富なナレッジを応用した独自のプロンプト（※5）と生成AIを掛け合わせることで、車載カメラの映像から交通状況に関する高精度な説明文を自動生成する技術を開発した。

同技術を活用することにより、自動生成した映像の説明文を基に必要なシーンを自然言語で瞬時に検索できるようになり、さらにそれらのデータと車両の走行データなどを紐づけることで、開発の期間短縮やコスト低減に貢献する。生成AIを用いて文章を作成するため、人の能力や感覚に依存しない均一な品質のデータを準備できるようになる。これにより、データの利用頻度、再利用性を向上させ、効率的なデータの利活用を促進できるという。

同社は2024年9月までに、自動車メーカーおよび車載器ベンダー向けに同技術を組み込んだクラウドソリューションの実用化を目指し、他業種での同技術の活用も検討していく。これまで培ってきたOTA（Over the Air）ソフトウェア更新技術や車両の制御に利用されるデータの分析技術などと合わせて、SDV（※6）時代の進展に貢献していく。

※1：記載された特許出願に関する表記は、2023年11月21日時点の状態を示すもの。特許などの状態は、第三者から請求された特許無効審判、権利化手続きの状況などにより、記載時点の状態とは異なる場合がある。
※2：ADAS（Advanced Driving Assistant System）：適切な車間距離を保つアクティブクルーズコントロール機能や車線維持機能など、ドライバーの運転負荷を軽減する機能
※3：AD（Autonomous Driving）：ステアリング操作や、加減速操作をはじめとした運転操作を自動化する機能
※4：機械学習のモデルを訓練する際に用いるデータのこと
※5：ユーザーがAIに対して入力する指示文や質問文
※6：Software Defined Vehicle（SDV）：車と外部との間の双方向通信機能を使って車を制御するソフトウェアを更新し、販売後も機能を増やしたり性能を高めたりできる自動車のこと