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免許不要な電動キックボードは危険なのか?規制緩和で生まれた"特例特定"小型原付 |【マイクロモビリティを正しく育てるために 第1回】

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免許不要な電動キックボードは危険なのか?規制緩和で生まれた"特例特定"小型原付 |【マイクロモビリティを正しく育てるために 第1回】
交通違反や事故の多さが問題視されている電動キックボード(資料:警察庁ウェブサイトより)

昨年夏に法律が改正され、“原付”に新しい区分が追加された。一部の電動キックボードや電動バイクなどには、16歳以上であれば運転免許がなくても乗ることができる。ヘルメットの着用も義務ではなくなった。その中で、特にキックボードについては危険性を危惧する声が少なくない。この特集では、「特定小型原付」のリスクとメリットについて考えながら、メーカーや行政の姿勢などについても検証していく。(本シリーズは最新号を無料公開)

昨年夏に道路交通法(以下、道交法)などが改正され、原動機付自転車、いわゆる“原付”に新しい区分が追加された。一部の電動(※)キックボードや電動バイクなど「特定小型原動機付自転車」(以下、特定小型原付)には、運転免許がなくても乗ることができる。ヘルメットの着用も義務ではなく「努力義務」とされた。

社会環境の変化に伴い、特定小型原付を含むマイクロモビリティのニーズは高まっていくだろう。人口減少地域では、電車やバスなどの公共交通機関が維持できないケースが現れつつある。手軽なモビリティとして、特定小型原付はそうした社会問題に対する解決策の1つになるポテンシャルを持っているのではないだろうか。

一方で、特に電動キックボードについては危険性を危惧する声も少なくなく、実際に交通事故や交通違反での検挙などが報道されている。この特集では、特定小型原付のリスクとメリットについて考えながら、メーカーや行政の姿勢などについても検証していく予定だ。可能性も秘めたこの新しいモビリティを、正しく進化させ大切に育てていくのもメディアの責務だと考える。第1回は、法律が特定小型原付をどう定めているのかを整理した。

(※原付に備わる原動機は電動に限定されないが、実情を鑑みて電動キックボードや電動バイクと表現する。)

現状:最高速度や走行区分が異なる3種類の“原付”が混走

モビリティを考える際、安全が最重要であることに議論の余地はないだろう。しかし、昨年7月1日の法改正以降、特定小型原付が関連する事故や交通違反による検挙件数は右肩上がりで増えている。最も多い違反は「通行区分」に関するもので、およそ半分を占める(警察庁発表:2023年7月から12月までのデータ)。事故に関しては、四輪車との接触によるものと単独での件数が多い。

警察庁ウェブサイトより

電動キックボードや電動バイクの中には、50ccバイクなどと同じ「一般原動機付自転車」(以下、一般原付)に分類されるモデルもある。運転するには免許の取得やヘルメットの装着が必須だ。一方で、特定小型原付の中には、「特例特定小型原動機付自転車」(以下、特例特定小型原付)と呼ばれる分類も存在する。走行区分や最高速度などが、一般原付だけでなく特定小型原付とも異なる。

つまり、見た目が同じで法律上の扱いが異なる電動キックボードなどが3種類存在し、車道や歩道、路側帯などに異なる速度で混走している。そうした複雑な制度が、事故や交通違反の原因の1つとなっているのは間違いないだろう。

法改正の経緯:3つの中央省庁を巻き込んだ大掛かりなプロジェクト

ここで改めて、法改正の経緯を振り返ってみたい。「道路交通法の一部を改正する法律(令和4年法律第32号)」、つまり改正道交法が公布(≒正式発表)されたのは2022(令和4)年4月27日のこと。それまで、電動キックボードなどは全て原付に分類され、運転免許の取得やヘルメットの装着などが義務付けられていた。

法改正では、新たな車両区分として特定小型原付が設けられ、一般原付と区別されたのが最も大きな変更点と言える。特定小型原付の走行ルールなどが新設された改正道交法が施行(≒運用開始)されたのが、昨年の7月1日のことだ。

道交法は基本的に交通ルールを定めたもので、車両ごとの走行区分や免許制度などに言及している。車体の大きさや最高速度などの詳細は、改正道交法と同日に施行された「道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令」が定めている。また、公道走行には保安基準に適合することが求められ、「道路運送車両法」に紐づく「道路運送車両の保安基準」も合わせて改正が行われた。

道交法を所管する警察庁、その施行規則(≒詳細)を担当する内閣府、さらに車両の保安基準を監督する国土交通省(以下、交通省)、3つの中央省庁を巻き込んだ大掛かりな法改正が行われた。

ハード面の整備:規格の明確化と認証制度の新設

次に、特定小型原付のハード面を見ていく。以下に示す要件のすべてに該当するものが特定小型原付とされる:

- 原動機の出力が0.6kW以下
- 最高速度が時速20キロを超えない
- 長さ1.9メートル・幅60センチ以下

電動キックボードだけでなく、電動バイクや四輪車も、この規定に該当する場合は特定小型原付となる。一方で、キックボードなどでも、この要件に該当しない場合、例えば時速20キロを超えるスピードが出るものは、特定小型原付ではなく一般原付に分類される。

国土交通省ウェブサイトより

今回の法改正では、「道路運送車両法の道路運送車両の保安基準に適合しない特定小型原動機付自転車は運行の用に供してはならない」と定められた。国交省が認めた民間機関や団体がメーカーの申請に基づいて保安基準適合性を確認し、認証を取得したモデルでなければ公道を走行できない。

保安基準では、ヘッドライト、ウインカー、テールライト、ブレーキランプ、後部反射器(リフレクター)、警音器(クラクション)、ブレーキ、スピードリミッターの装備が求められる。前後に最高速度表示灯を取り付けることも義務化されている。またギヤの変更機構が無いこと(オートマチックトランスミッション)も条件とされている。

国土交通省ウェブサイトより

基準を満たしたモデルには「性能等確認済シール」が貼られ、認証取得済みであることが分かるようになっている。法改正以前に販売された電動キックボード等には、ライト類やスピードリミッターなどを中心に現在の基準に適合しない製品も少なくない。国交省は一般からの情報提供窓口の設置や市場での調査などを行い、不適合品の流通防止に取り組んでいる。

性能等確認済シール

運用面の整備:道交法と内閣府令が走行区分や最高速度等を規定

基本的に特定小型原付が歩道を走行することは認められていない。車道と歩道が区別されているところや路側帯がある道路では、車道を通行することが道交法で定められている。これは電動キックボードなどが一律に原付と定義されていた法改正前と変更はない。

昨年7月1日以降変わったのは、特定小型原付であれば自転車道や自転車用レーンも走ることができるように定められた。また、一般原付の最高速度がこれまで通り30km/hであるのに対し、特定小型原付は20km/hに制限された。いずれの場合も、原則として走行帯の左側を通行する。違反した場合、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられる。

なお、ナンバープレートの装着と自賠責保険への加入が義務付けられるのも改正前の原付時代と同じだ。当然ではあるが、飲酒運転や二人乗りも禁止されている。

特定小型原付の走行区分(警察庁ウェブサイトより)

一方で、大幅に緩和された印象を受ける条件もある。これまでは原付として運転免許が必要だったが、特定小型原付は16歳以上であれば無免許で乗れるよう道交法が定めた。ヘルメットの装着も「努力義務」で、「できるだけ被ってくださいね」というものになった。

編集部作成

混乱と課題の発生:自転車ルールの周知不足に「特例」特定小型原付が追加

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