中国EV墓場から見る環境配慮が環境破壊を生む皮肉
世界各国におけるEVの販売台数が増加する中、世界のEV市場を牽引している国として中国が挙げられる。
中国はかねてよりNEVの開発、普及のための取り組みを開始している。これまでEVの製造や購入に対して多額の補助金を用意したことで中国のEV業界は急速に成長を遂げてきた。
しかしながら、その一方で「EV墓場」と呼ばれる問題も顕在化してきているようだ。このEV墓場はどのような理由で発生してしまうのか、またどのような問題があるのかを眺めていく。
目次
EVの過剰供給による大量放置されできたEV墓場
適切な処理を受けずにEVが大量に放置されている場所がまるで墓場のように見えることから「EV墓場」と呼ばれているようだ。その原因は、EVの過剰供給によるところが大きい。
中国では既に社会問題化となっており、300メートル四方という広大な土地に約2,000台のEVが敷き詰められるように打ち捨てられている例も報告されている。
この現象は中国だけに限らない。近年、アメリカではカーリース需要が増加している。その契約期間終了に伴いEV中古車が増加、多量の在庫が放置車両を生み出す危険性がある。それを後押しするのが、昨今のEV離れだ。
アメリカではHV販売増を受け、2024年3月20日に発表された自動車の二酸化炭素排出量の新基準の規制案の最終案にて、PHVやHVの導入が認められた。この出来事は国内のEV離れをさらに加速させ、中古EVの販売を阻む障壁となる可能性がある。
世界各国でEVが推進される現代社会において、注意すべき問題なのだ。
墓場を増加させてしまう過剰なEV普及制度
なぜEV墓場と呼ばれる現象が起きるのか。その理由の一つとして、EVを普及させるための補助金制度が挙げられる。
中国は積極的なEVの生産や販売・輸出を奨励しており、一定の条件を満たすこと様々な優遇措置や奨励金・補助金を受けられる制度が用意されているようだ。その結果、EVメーカーやEV関連のサービスを展開する会社が乱立。こぞって優遇措置や奨励金・補助金を獲得しようとした。
また、制度の特性上、過剰な台数を製造し架空登録することで販売台数を増加させるという行為が行われている可能性も否定できない。
結果として過剰に製造されたEVが廃棄され、この墓場が誕生する。
その一方、中国でのEV市場の過度な競争も原因の一つと考えられるだろう。
国が推進するEV施策や、近年話題のシェアリングサービスなどに対して多くの企業が市場に参入している。華々しいEV市場の影には、この苛烈な競争についていけずに倒産に追い込まれる企業も存在する。では彼らが所有していたEVはどうなるのだろうか。経営難に陥った会社は適切なEVの処分ができず、そのまま放置されることになる。
国をあげてEV市場を盛り上げようとした結果、使用されないEVが急増してしまったことがEV墓場の誕生に繋がっているのだろう。