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LIB製造コスト大幅改善に寄与する「ドライ電極技術」、全固体電池実現が遠のく市場の光明となるか

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LIB製造コスト大幅改善に寄与する「ドライ電極技術」、全固体電池実現が遠のく市場の光明となるか

全固体電池にはEVが抱える数々の課題解決が期待されている。この全固体電池が現在向き合っているのは大量生産という高い壁だ。

コスト低減や品質安定には長期間の時間を要するため、全固体電池を主軸としたEVが市場に登場するのは2030年以降と見ていいだろう。全固体電池搭載のEVに至るまでの道中、電池コスト低減のために自動車メーカーや電池メーカーが着目するのがドライ電極だ。

このドライ電極はリチウムイオン電池の新しい製造技術として知られている。最大の特徴は従来必要だった電極の乾燥プロセスを省略できることだ。また、リチウムイオン電池の課題となる莫大な設備投資や製造コストの削減にも寄与できる。

ドライ電極技術は、電極活物質、バインダー、導電助剤といった粉体だけを混合し、それを集電体上に形成するもの。細かな手法は各社によって異なるが、世界の自動車産業が注目を寄せている。

リチウムイオン電池製造工程から膨大なコストが発生する乾燥プロセスを省略、高いコストパフォーマンスが期待できるドライ電極技術

ドライ電極は前述のように従来のリチウムイオン電池製造工程で不可欠だった乾燥工程を不要にする。これによりリチウムイオン電池製造におけるエネルギーコストを4~5割ほど減少させることができ、かつ関連設備投資を抑制できるなど、コスト的なメリットが非常に大きい。テスラ、VW、CATL、LGエナジーソリューションといった大手メーカーがこぞって早期の実用化を狙う。

一般的なリチウムイオン電池の電極製造工程はこのようなものだ。

まず、正極材や負極材、バインダー(接着剤)などを有機溶媒に混ぜてスラリーといわれる流動性のあるペーストにする。次に、スラリーを集電体となる金属箔に塗工、乾燥炉で熱をかけて溶媒を除去。乾燥したものをプレスして所定の厚さに仕上げ、ロール状の電極とする。

従来のウエット電極によるリチウムイオン電池製造プロセスをざっくりと分けるなら、

・電極活物質(正極と負極)、溶剤、バインダー、導電助剤、水などを撹拌機で混合してスラリー状とする「攪拌工程」

・これを塗工機によりシート状の集電体(アルミ箔や銅箔)上に塗工し、乾燥機で乾燥する「塗工・乾燥工程」

・乾燥した集電体電極をプレス機で圧延する「プレス工程」

に大別できる。

中でも重要度の高い攪拌工程は、溶剤や水を混ぜることでドロドロのスラリー状とすることで集電体上に塗工しやすくなり、電極活物質などを満遍なく分布させることで蓄電池としての性能を確保する。

乾燥工程では空気加温によって乾燥させる熱風乾燥により不要な溶剤や水を取り除いていくが、その際に外気を取り入れながら常に炉内を高水準で加温させることが求められる。乾燥させるための乾燥炉は長さが50~100mに達する巨大な装置であり、電池事業の投資額を莫大にする原因にもなる。さらに多くのCO2排出量の主因ともなっていた。

この乾燥工程に占めるエネルギーコストはリチウムイオン電池製造全体の中でも比率が大きく、VWによれば電池製造プロセス全体で消費するエネルギーの約3割を乾燥工程が占めていたようだ。さらに、回収した溶剤は溶剤回収設備で排気処理するが、処理コストに年間数億円以上かかるケースも少なくない。

このような製造プロセスと向き合ったのがドライ電極である。

「ドライコーティング」や「ドライプロセス」などとも呼ばれる技術でもあり、電極製造プロセスから乾燥工程をカットしている。

結果として先述のエネルギーコストや関連設備投資を抑制に直結するほか、工場の大部分を占める乾燥工程の省フットプリント化をも実現することができる。製造プロセスの中から乾燥工程を省略することによって生産性向上も期待できる。

テスラはまず「4680」で適用、量産化に向けた設備投資も行う

バッテリーテクノロジー!!!!!

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