水素&合成燃料は勝機となるか。日本に求められるCN燃料バリューチェーン構築
カーボンニュートラル化への流れが目立つ昨今。改めて注目を集めているのが、バイオ燃料や合成燃料(e-fuel)などのカーボンニュートラル燃料だ。
多様なカーボンニュートラル燃料は全方位でのカーボンニュートラル化実現に向けたEV化、FCEV化に続く第3の選択肢となるか。
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多様な活用が期待される水素の位置付け
カーボンニュートラル燃料に向き合う上で特に重要なのは、水素の位置付けだろう。
水素については、燃料電池や水素エンジンなど、水素単独でもエネルギーキャリアとしての活用が検討が進められている。それに加え、輸送性や安全性などの観点から他の物質に変換・合成する形での活用可能性も検討されているようだ。
特に、現状で有望視されているのが水素を原料としたカーボンニュートラル燃料が「アンモニア」と「合成燃料」である。
アンモニアは現状では特に火力発電での混焼発電用などで有望視されており、発電用途向け燃料としての用途開拓が進みつつある。対して輸送機器向けのカーボンニュートラル燃料として有望視されているのが、合成燃料だ。
合成燃料には、ガソリン代替の「e-gasoline」、ディーゼル燃料代替の「e-diesel」、液化石油ガス(LPG)や液化天然ガス(LNG)代替の「e-gas」などがあるが、基本的には輸送機器用の燃料としての利用が想定されている。また、合成燃料はその名の通り水素とCO2から合成される燃料だ。そのためこれらは水素の活用先の1つにもなっている。
カーボンニュートラル燃料であるバイオ燃料はエコか
カーボンニュートラル燃料として、もう1つ注目を集めているのが、自然物から合成するバイオ燃料だ。バイオ燃料も幾つかの世代に分かれており、第1世代と呼ばれるのがトウモロコシやサトウキビなどの穀物を原料に造られるバイオエタノールやバイオディーゼルである。
これらは原則として石油製品と混合して使用される。これに対して、第2世代である廃食油・植物油・植物残さ、第3世代である微細藻類を原料に製造されるHVO(Hydrotreated Vegetable Oil:水素化分解油)や、SAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)は、原料の油脂を水素化処理するなどして製造し、石油製品と混合せずに使用することができる。
これらバイオ燃料は植物由来の原料を使用して製造されるという特性から、基本的には全てカーボンニュートラル燃料と認定される。
この燃料に関してはアメリカはもちろん各国が取り組んでいるが、製造コストおよび製造技術の開発費用の高さが課題となっている。さらにバイオ燃料の生産が活発化することにより、食料との競合や生態系の破壊といった問題を招くリスクがあるとの指摘もある。
持続可能性という観点に立った時、ライフサイクル全体を通してエコなのかどうか。燃料と環境はまだトレードオフの関係のままのように見える。