単位が意味することと、数値の基準|電動車のスペックの見方
単位が意味することと、数値の基準
電気モーターを駆動に用いる車両では、諸元の多くが電気にまつわる単位で表されている。それらの単位の持つ意味と、現在の標準的な性能数値の範囲をまとめてみた。
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)/宮門秀行(Hideyuki MIYAKADO)
TOYOTA/NISSAN/HONDA/SUBARU/SUZUKI/MAZDA/LEXUS/VW/PORSCHE/ROHM/MFi
FIGURE:TOKAI UNIVERCITY
目次
- システムで異なるモーター出力と、その原因
- 電動車におけるパワーアップ
- 日産・リーフ EM57モーター
- トヨタ・プリウス THS用モーター
- 定格出力と最高出力はなにが違うのか?
- 強電対応か否か
- “強電”を扱うシステムに必要な高電圧ケーブルなどの安全対策
- バッテリー電圧を昇圧してモーターに印加する
- バッテリーに蓄えられた電力の身で走行するEVは損失低減と急速充電のため高電圧化が進む
- 168個のリチウムイオンセルで国産PHEV最大の電力量を確保
- 駆動用バッテリーに用いられるセルの種類とその特徴
- リチウムイオン一択の状況その背景にあるもの
- リーフのバッテリーパックにみるバッテリーセルの接続方法
- 270kW超の急速充電が視野にEVで進む高電圧化の意味
- AC(交流)とDC(直流)ふたつの充電方法とその違い
- 急速充電の高出力化のカギを握る「冷却」という課題
システムで異なるモーター出力と、その原因
HEVやEVに加え、48Vマイルドハイブリッドなど、電動技術のバリエーションが増えるなか、小さいものは数kWから、大きなものでは500kWを超えるものまで、さまざまなモーター出力を持つモデルが登場している。しかし、内燃エンジンにおける排気量のような見慣れた指標のない電動車では、その出力が果たしてどのような“立ち位置”にあるのか、判断しづらいのではないだろうか。
前提として重要なのは、基本的な傾向として体格が同じであれば電気モーター出力の上限は印加(供給)される電圧に比例するということ。モーターに流すことのできる電流の最大値は、ステーターコイルを構成する銅線部分の体積で決まると思って良い。これはモーターの体格とほぼ同義であり、システム構成(EVやHEVといった種別)や車格により、おおよそ似たようなレベルに落ち着いてくる。kWで表されるモーターの出力はそのまま電力であり、電力(W)=電圧(V)×電流(A)の公式のうえに成り立つ。電流が制約されるということは、出力は残るもうひとつの要素である電圧次第。つまり、車載される駆動用バッテリーの電圧次第ということになる。