車の価値を左右する新しい価値観「ソフトウェア領域」で日本は戦えるのか
最近の自動車業界ではSDV(ソフトウェアが価値を定義する車)という言葉が重要なキーワードとして扱われている。SDVではソフトウェアが車両の機能や性能を高め、価値を提供する。
「車のスマホ化」「車の家電化」という表現をよく目にするようになったが、それもこのソフトウェアの登場に起因する。
高い生産コストが発生し、まだまだ採算が低いEV領域において、新たな収益源としてこのソフトウェアに期待が集まっている。
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車両の価値向上を担うソフトウェア
国内でも、ソフトウェアを使ったビジネスが次々登場してきている。トヨタ自動車傘下で新車のサブスクリプションサービスを手がけるKINTOもその一つだ。新型プリウスの一部車種で「KINTO Unlimited」を開始した。
「OTA(Over The Air=無線通信)」を通じた衝突被害軽減ブレーキなどの安全機能を追加するほか、ハードウェアの装備、機能の後付けも実施。KINTO側は「通常低下していく車の価値を維持する独自の仕組みを構築する」と説明している。
従来であれば新車は購入後、年月が経つにつれ価値が減少し、伴って中古車価格も減少する(中古価格が高騰する車種も存在しているが)。
しかし、当サービスでは保有車両の残存価値を上昇させることで中古車価格の低下を防止することができるだろう。
一方、テスラはOTAを通じて「FSD(フルセルフドライビング)」と呼ばれる自動運転機能の更新の実装も行われている。まだ完全な自律走行には至っていないようだが、コストや航続距離に影響を与えることなく新しいレベルの安全性と自律性を実現しようとしている。
ボストンコンサルティンググループは、車載ソフトウェアと電子機器による自動車メーカーの収益は現状の870億ドルから、2030年までに2480億ドルに達すると予測した。
さらに関連サプライヤーの市場規模は2360億ドルから4110億ドルに拡大するという見通しも報告している。しかし日本勢はOTA実装の本格化が2025年以降へ後ろ倒しになるなど、まだまだ見通しの悪い状況が続いている。