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ライドシェア限定解除で生まれる利点、生まれる危険

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ライドシェア限定解除で生まれる利点、生まれる危険

利用者目線としながら既存の業界の規制緩和という見方も。一般ドライバー参入に業界は戦々恐々か。

2024年4月よりライドシェアが限定的に解禁された。

現状ではタクシー会社が運送主体となり、タクシー不足の地域、時期、時間帯に限って実施するとのことだ。タクシー会社以外もこの市場に参入可能となる「全面解禁」は、法制度も含め6月に向けて議論を深めていく。

ライドシェアを世界的に眺めると、主にUberが配車アプリを用いたサービスを展開しており、類似のアプリも登場している。

片や日本では一般ドライバーによる旅客運送は「白タク行為」と認識され、原則禁止されてきた。その日本がライドシェアが実用化の方向に動き出したのにはどのような理由があるのだろうか。

ILLUSTRATION:Shutterstock

2023年3月末のタクシードライバー数は2019年3月末に比べ約2割減少。新型コロナウィルスが大きく影響

タクシードライバーの数が年々右肩下がりが続いてきたところへコロナ禍が直撃したことは大きい。2023年3月末の法人タクシーのドライバー数は約23,2万人となっており、2019年3月末と比べ約2割も減少している。

しかし2023年5月にコロナの5類移行を受け、国内だけでなく欧米やアジアなど海外からのインバウンドが急増する。人の流れが回復したことで急激にタクシー需要が膨らむ中、ドライバー不足のためにタクシーの供給が追いつかない状況が発生したと見られる。

菅義偉氏や河野太郎氏、小泉進次郎氏など、発言力のある政治家がライドシェアについて前向きな発言をしたことも解禁の後押しとなったはずだ。

多くのメディアが報道で採用したことも大きかった。規制緩和を掲げる先進的なイメージの浸透に一役買ったと言える。

今回の政府方針では、現段階においてはタクシー会社が運行管理を担うことを前提とし、タクシーが不足する地域や時期、時間帯での運行に限定するなど、ライドシェアの解禁に当たって業界に配慮をしているようにも映る。

2024年4月8日よりサービスを開始した東京都

タクシー業界は以前からラドシェアには「反対」の姿勢を示していた。タクシー業界は今まで様々な制約がある中でコストをかけて運行管理をしてきたことはもちろんだが、導入を急ぐユーザーの増加や準備期間や検証期間も満足に用意できない中で進めてしまうことの危機感を考えれば妥当と言えるだろう。

対してタクシー会社主体のライドシェア案をチャンスと捉える会社も一定数存在する。人手不足で対応できない時間帯や地域であったとしても、一般ドライバーを参画させることでサービス提供が可能となるためだ。

業界側から先手を打った動きも出た。

2024年1月10日、都内の業界団体である東京ハイヤー・タクシ協会(東タク協)は、4月から「日本型ライドシェア」と銘打ったサービスを始動すると発表した。タクシー会社がタクシーと同等の運行管理や整備管理を実施すること衝突被害軽減ブレーキと通信型ドライブレコーダーを必須とする。なお、タクシーが不足している地域・時期・時間帯のみを対象とする。

具体的には平日の朝7〜11時、金曜の夜24時〜早朝4時などを例示。

ドライバーは1種免許または2種免許の保持者とし、タクシー会社と雇用契約を締結。配車や支払いはアプリのみで行い、運賃はタクシーと同等を想定する。

また都内最大手の日本交通は、日本型ライドシェアのドライバーのプレエントリーを1月末からスタートした。そして2024年4月8日から順次開始され、5都府県で128事業者が運行を許可され、延べ2,283台が稼働している。

東京都以外のライドシェアにおける主な地域の動向

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