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クボタがカーボンニュートラルに向けて開発する、置き換えが容易な水素燃焼エンジン【水素という選択肢 Vol. 5】

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クボタがカーボンニュートラルに向けて開発する、置き換えが容易な水素燃焼エンジン【水素という選択肢 Vol. 5】
カーボンニュートラルを目指す水素燃焼エンジン|V3800型エンジン(ディーゼル仕様)をベースに開発し、搭載の互換性を確保。出発点がディーゼルのため、動弁系はOHVの4弁式でバルブ挟み角は0度。ピストンのベースもディーゼルと共用するため、圧縮比を下げるために薄肉化を実施。高温強度とバランスをとるのが難しかったという。水素エンジンは超希薄燃焼が可能なため、ターボによって吸入空気量を増大。NOxの排出量が少ないのもメリットだが、λ=1に近づくほどNOxが増大するので、水冷式EGRを装着。尿素SCRを付けずに現規制レベルのNOx排出量を目標にしている。水素噴射は低圧なポート式とし、耐久信頼性の確保、水素タンクの有効活用を狙う。このエンジンは2023年5月に開催された「第5回 建設・測量生産性向上展」で国内初公開された。

カーボンニュートラルに向けたクボタエンジンの取り組みとして、今号で解説するのは水素燃焼エンジンだ。自動車用パワートレーンとしても近年、大きな注目を集めているが建機や農機に使う場合でもメリットは数多い。水素燃焼エンジンの特徴と開発の進捗を、クボタのエンジニアに訊く。

CO2排出量削減に向けて、BEV以外の選択肢にも注目が集まるようになってきた。その1つが水素を燃料に使用するICEだ。クボタが開発する水素エンジンについて、Motor Fan illustrated 204号(2023年10月)から抜粋して紹介する。<情報は当時のもの>

TEXT:安藤 眞(Makoto ANDO) PHOTO:稲田浩章(Hiroaki INADA)/KUBOTA

低炭素社会の実現には、再生可能エネルギーの活用が必須となるが、太陽光や風力などは、発電量が時間や気象に左右されるのに加え、適地も偏在している。そこで、再生可能エネルギーで発電した電気を水素に変換し、貯蔵・輸送しやすくしておくのが合理的。水素の利用方法には、燃料電池(FC)による発電や、合成燃料の製造などさまざまあるが、農機や建機などオフロード分野で使い勝手が良いのは、水素の直接燃焼。すなわち水素エンジンである。

燃料電池に対する水素エンジンの優位性は、まず低コストであること。既存エンジンの骨格部分が転用できるため、新規開発部品や設備投資が少なくて済む。実際、クボタが開発中の水素エンジンも、すでに量産されているV3800型3.8ℓ直列4気筒エンジンをベースとしており、専用設計したのは燃料の供給系と噴射系、それに適応するためのシリンダーヘッドまわり、ピストンのキャビティ形状程度である。

既存骨格が利用できるのは、OEMにとってもメリットがある。マウント位置や動力の取り出し位置が変わらないため、既存の車体に大きな変更を加えることなく、自社製品を低炭素仕様にできるからだ。特にトラクターの場合、パワートレーン全体がシャシーも兼ねているため、電動化するには全体のレイアウトを見直す必要がある。パワートレーンまで自社開発しているOEMなら対応できても、パワートレーンの供給を社外から受けているOEMには、多大な開発負担が発生することになる。

堺臨海工場エリアに自社で水素貯蔵庫も用意|水素エンジン開発のため、専用のテストベンチを新設。水素センサーが各所に設置されており、水素を検知すると緊急遮断弁が作動し、窒素ガスによるパージが行なわれる。
赤く塗られているのが水素ボンベ(高圧ガス保安法によって充填するガスの種類ごとに色が決められている)だ。

耐久信頼性の確保や、水素純度に対するロバスト性の高さも、水素エンジンのほうが有利。燃料電池は触媒に白金を使用するため、水素に一酸化炭素などの不純物が含まれていると、触媒の劣化が加速してしまう。だから燃料電池用の水素には、99.97%以上の純度が求められている。しかし、内燃機関による直接燃焼ならば、そこまでの純度は必要としない。

著者
安藤 眞
テクニカルライター

大学卒業後、国産自動車メーカーのシャシー設計部門に勤務。英国スポーツカーメーカーとの共同プロジェクトや、SUVの電子制御油空圧サスペンションなどを担当した後、約5年で退職する。その後しばらくはクルマから離れ、建具屋の修行や地域新聞記者、アウトドアライター兼カメラマンをしていたが、気付いたら自動車技術解説の仕事がもっとも多くなっていた。道路交通法第38条の認知度を高める会会長(会員は本人のみ)。

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