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千葉市、デジタルツインを用いた「バーチャル幕張新都心」で自動運転レベル4の安全性検証

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千葉市、デジタルツインを用いた「バーチャル幕張新都心」で自動運転レベル4の安全性検証

千葉市は8月22日、自動運転サービスの実装に向け、デジタルツインを活用して再現した幕張新都心の仮想空間で安全性検証を実施すると発表した。

レベル4(※1)の自動運転サービスを、都市部の人口密集地で社会実装するには、人や車両が多く行き交う公道での安全性の担保や、交通流に応じた停車位置、運行スケジュールの調整など実運用上の課題がある。

千葉市は、自動運転車を含む未来技術モビリティの実装に向けて、さまざまな実証実験に取り組んでいるが、実車を用いた公道での検証には想定外のリスクが伴うほか、人や車両の急な飛び出しや交通量の多い道路での右左折など危険が伴う状況のすべてのシナリオを検証することは難しい。自動運転車両の調達費や運転手の人件費などの費用や、検証準備から実走行に至るまでに数カ月から半年と長時間を要するといった課題もある。

同取り組みでは、現実の環境を仮想空間に構築したデジタルツインでのシミュレーションを繰り返して行う。デジタルツイン技術は、現実の物理空間にある情報をIoTなどで集め、仮想空間で再現する技術。同技術を利用し、実車を用いた公道での検証では困難なシナリオを含めた仮想空間でのシミュレーションを行うことで、レベル4の自動運転サービス実装に向けた、質の高い安全性検証の実現を目指す。

仮想空間の環境は、幕張新都心の実際の交通環境や車両走行データ、リスク箇所や事故データを用いて構築。その上で、走行条件や車両パラメータを自由に設定し、走行検証を繰り返す。

同事業の後には、運行業者による走行のトライアンドエラーを実車走行とデジタルツイン環境の双方で繰り返しながら改善を重ねることも予定している。どのような走行条件であれば安全な運行が可能であるのかを緻密に分析し、幕張新都心における自動運転サービスの社会実装に貢献する。

デジタルツインを用いたシミュレーション イメージ図(画像は千葉市より提供)
デジタルツインを用いたシミュレーション イメージ図(画像は千葉市より提供)

同事業は千葉市が主体となって実施するもので、自治体が主導し仮想空間で自動運転の安全性を検証する事業は、全国初(※2)となる。

アドバイザリー・事業進捗監督はデロイト トーマツ コンサルティングが担当。デジタルツイン環境構築と安全性検証はBIPROGY(ビプロジー)が担当し、三菱プレシジョン、東京海上日動火災保険、IHI、先進モビリティへ再委託し、事業を進める。

受託企業6社の役割は以下の通り

・デロイト トーマツ コンサルティング
自動運転車の安全性検証やデジタルツインに係る知見に基づくアドバイザリー及び事業進捗の監督。

・BIPROGY
デジタルツイン環境の構築、安全性評価の為のシナリオ検討及びシミュレーション実施。

・三菱プレシジョン
幕張新都心周辺の環境計測とデジタルツイン環境対応の3Dモデル化。

・東京海上日動火災保険
自動車保険の特約として提供している通信型ドライブレコーダーのデータ等を活用した幕張新都心の交通環境に基づくリスクマップの作成や、現地調査に基づく検証シナリオの作成。

・IHI
幕張新都心の交通環境(事故データ/交通流等)に基づくリスク箇所の検討、検証シナリオの抽出。

・先進モビリティ
デジタルツイン環境上への自動運転車両モデル導入及びチューニング、ODD(※3)検討/安全性検証。

安全性検証のスケジュールは、幕張新都心のデジタルツイン環境構築と、検証シナリオの作成を9月頃までに完了し、走行シミュレーション・ODD検討と安全性検証を2024年10月〜2025年3月の期間で予定している。

同事業を通じて構築したデジタルツイン上で、シミュレーションによるODD評価・フィードバックを行い、将来的にはまちづくりなどへの活用も想定している。

※1:場所や天候、速度などの特定条件の下、自動運転システムが主体となって車を操縦し制御を実施
※2:自治体の公開情報を基にデロイト トーマツ グループによる調査(2024年8月22日時点)
※3:Operational Design Domain。道路条件、地理条件、環境条件など、自動運転システムが正常に作動する前提となる設計上の走行環境に係る特有の条件のこと

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