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【海外技術情報】フラウンホーファー研究所:トラック運転手に駐車場所を教えるAIソリューション

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【海外技術情報】フラウンホーファー研究所:トラック運転手に駐車場所を教えるAIソリューション

トラックの駐車スペース不足は、ドイツでも問題となっている。特に高速道路沿いの休憩所で、駐車スペースが不足している。トラック運転手は一定の休憩時間をとることが法律で義務付けられているのだが、駐車スペースが見つからないと、休憩所の入口や出口の脇、路肩に駐車してしまう。これは日本でも良く見かける光景だが、言うまでもなく危険だ。

そこで立ち上げられたのが、Smart Optimized Lorry Parking(SOLP)プロジェクト。フラウンホーファー研究所がプロジェクトを通じてパートナーと協力して、トラック運転手と運送会社に向けて、AI支援による予測ツールを開発している。目標は、利用可能な(公共と民間の)駐車スペース情報を提供して、トラック運転者が駐車場を見つけやすくすることである。

高速道路沿いのトラック駐車スペースを、運転者が見つけやすくするAIソリューション

ドイツの高速道路沿いのトラック駐車場は、運送会社にとって大きな課題となっている。利用可能な駐車場と法律で義務付けられた厳格な運転時間要件をルート計画に組み込む必要があるからだ。全国的な道路輸送、物流、廃棄物処理協会である連邦道路運送・物流・廃棄物処理協会(BGL)は、ドイツの高速道路上とその周辺の駐車スペースが4万台分も不足している、としている。さらに悪いことに、この数字は増加傾向にあるという。

義務付けられた休憩時間に定期的にトラックを駐車できるスペースを見つけることは、トラック運転手にとって頭痛の種だ。駐車スペースを見つけるのが非常に難しい。駐車スペースを探すのに時間がかかるため、運転時間規制に違反するリスクを負うことになる。万が一違反してしまうと、高額の罰金が科せられ、最悪の場合には免許を取り消されてしまう恐れがある。休憩所の混雑が原因となり、運転手が違法駐車を含め、危険な場所に駐車してしまうこともある。

SOLPプロジェクトは、この問題の解決を目指している。フラウンホーファーの研究者は、BLUE Con​​sult、KRAVAG、SVG Assekuranz Serviceと連携して、トラック運転手や運送会社が利用できる、公共および民間の駐車スペース情報を提供するAI支援予測ツールを開発している。このソリューションは、トラック運転手が駐車スペースを見つけやすくし、既存の駐車スペースをより効率的に利用することで事故を防ぎ、高速道路交通の流れを改善することを目的としている。プロジェクトはドイツ連邦デジタル交通省(BMDV)から資金提供を受けている。

デジタルデバイスで、駐車スペースの占有状況を色分けして表示する

SOLPが開発しているシステムでは既存のアプローチとは異なり、関連ルートを道路と駐車場の静的なシーケンスとして考慮しない。その代わりに、交通密度、駐車スペースの空き状況、特定運転手の運転時間と休憩時間などの相互依存要因に基づいて、使用可能な駐車スペースの動的な予測を計算する。

AIモデリングを担当しているフラウンホーファー研究所のトーマス・マイヤース氏は以下のように述べた。

「この革新的なAIソリューションは、高速道路沿いのトラック駐車場の占有レベルに関する推奨事項を表示して、ドライバーが法的要件に留意しながらそれらのスポットに迅速に進むことができるようにします」

このシステムは利用可能な駐車場に関する情報を色分けして提供する。AI対応のデジタルツールはアプリまたは車載ユニットに組み込まれ、運転手の走行ルートに沿って駐車場の占有状況を色分けして表示する。

赤は満車、黄色は駐車が許容されているスペース、緑は利用可能なスペースを表す。予測は2時間先について行われ、15分ごとに更新される。AIは誘導ループの位置と特徴(通過する車両の数をカウントする)、高速道路ネットワーク内の駐車スペース、交通量データ、駐車場の占有状況データを使用してトレーニングされる。予測を生成するために、現在の情報が分析され、トラック運転手の走行ルートとリアルタイムでリンクされる。

開発中のパイロットアプリケーションは全国的に展開される前のステップとして、ドイツ各地のトラック運転手によりテストされる予定である。プロジェクトパートナーの目標には、駐車場の占有効率の向上と交通渋滞リスク軽減が含まれているほか、駐車場入口での不適切駐車による事故防止も目的としている。

このAIソリューションはトラック運転手の負担を大幅に軽減して、休憩時間に関する法律を遵守する具体的な方法を提供し、ストレスを軽減する。また物流会社は、燃料を節約してコストを削減しながら、より確実に配送を計画できるようになる。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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