デンソー、善明製作所に新工場を建設。デジタル化による24時間無人稼働の次世代工場を目指す
デンソーは、愛知県西尾市にある善明製作所の敷地を拡張し、新たな工場を建設することを発表した。2025年度上期に着工し、2027年1月に竣工、2028年度上期から生産を開始する予定で、工場建屋の総投資額は約690億円が計画されている。
新工場建設の背景
「基盤技術の強化」の一つであるソフトウェアは、電動化製品や高度運転支援システム(ADAS)製品などを制御するECU(Electronic Control Unit)に組み込まれており、重要な役割を担っている。今後、SDV(Software Defined Vehicle)や電動化などの進展により、クルマの各機能を横断的に制御する大規模統合ECUが必要となる。新工場では、主に大規模統合ECUの生産を担い、今後の市場拡大や顧客のニーズにタイムリーに対応可能な生産体制が構築される。
また今回の新工場は、デンソーの次世代工場のコンセプトを、工場の構想段階から織り込んだ初めての工場となる。日本の労働力人口の減少や気候変動が激化する中でも、魅力ある製品を安定的に供給し続けるためには、生産性の向上や環境への配慮といった社会課題の解決が不可欠である。そこで、デジタルインフラと自動化技術の導入により無人稼働を実現し、工場で働く一人ひとりが人にしかできない創造性の高い仕事に従事する働き方を提案していく。さらに、太陽光パネルによる自家発電や水素などを活用し、環境にやさしいカーボンニュートラルな工場が目指される。
次世代工場の特長
1. フレキシブル生産システム
・製品を構成する部品やそれらの材料を標準化。設備組み換えが容易な生産ラインと組み合わせ、1つのラインで多品種の生産を実現し、製品の種類や量の変動にスピーディーかつ柔軟に対応する。
・生産設備を構成する部品やユニットを標準化。さらに、加工プログラムにおいても標準化を進め、ソフトウェアの互換性も高めることで、設備の新設や組み換えといった生産準備にかかる時間を大幅に短縮する。
2. 24時間無人で稼働
・工場内に設置したカメラやセンサーで設備やモノの流れを常時監視。設備停止につながる予兆を検知した場合は、遠隔にて状況を判断し、設備の停止前に対応することで、生産ラインの24時間稼働を目指す。
・生産ラインだけでなく、材料や部品などの荷卸から工場内での搬送、材料の補給・投入、製品出荷のための梱包までを自動化することで無人化を目指す。
3. デジタルを駆使した働き方へのシフト
・デジタルツイン技術で仮想空間に工場を再現し、設備製作前に設備の動作をシミュレーションすることで事前検証を行い、効率的でムダのない生産システム構築に貢献する。
・これまでのモノづくりを通じて蓄積してきた現場のノウハウを形式知化し、誰もが使えるようにデータベース化。そのデータベースを活用し、より高いレベルの自動化を推進することで、スピーディーに改善サイクルを回し、モノづくりの進化を促進する。
新工場の概要
竣工: 2027年1月予定
生産品目: 電動化およびADAS制御用ECUの製造
敷地面積: 約510,000㎡
工場面積: 約56,000㎡