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都立大との共同研究「カーボンナノチューブ糸による熱電発電」を大きく前進させた"東海理化独自の技術"とは|第3回 ネプコンジャパン【秋】-エレクトロニクス開発・実装展-

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都立大との共同研究「カーボンナノチューブ糸による熱電発電」を大きく前進させた"東海理化独自の技術"とは|第3回 ネプコンジャパン【秋】-エレクトロニクス開発・実装展-
温度差によって発電する、カーボンナノチューブ糸を用いた熱電発電技術の展示。温度差によって発電でLEDが点灯する

株式会社東海理化は、今回の展示会に「カーボンナノチューブ糸を用いた熱電発電技術」を公開した。この技術は、軽量かつフレキシブルな素材でありながら、効率的に温度差を電力に変換できるという点で、従来の発電技術とは一線を画すものである。では実際にどのように機能し、今後どのような活用が期待されるのか。東海理化生技開発部未来創造グループグループ長 松浦司氏に話を聞いた。

TEXT&PHOTO :那須野明彦(Akihiko Nasuno)
主催:RX Japan株式会社

カーボンナノチューブ糸による“新たな”熱電発電技術

株式会社東海理化は、愛知県丹羽郡大口町に本社を置くトヨタ系の大手自動車部品メーカーだ。自動車用スイッチやシフトレバー、シートベルトなど多くの製品を手がけている。同社は東京都立大学共同で、カーボンナノチューブを活用した効率的な熱電変換技術の開発を進め、2022年よりその発電性能を向上させるための研究を行ってきた。そしてその技術を、今回のネプコン ジャパン【秋】にて初めて公開したのである。

「物体の両端に温度差を与えると、それに比例して電圧(起電力)が発生するのが熱電発電です。この技術は、排熱などの熱エネルギーを電力に変換する再生可能エネルギーとして注目されていますが、カーボンナノチューブは特にこの変換効率に優れています」と松浦氏。

そこで着目したのが糸形状のカーボンナノチューブである。金属よりも軽量でフレキシブルな特性を持ち、発電材料としてまさに理想的だ。特に、温度差に応じて正の電圧を発生するP型ナノチューブ糸と、負の電圧を発生するN型ナノチューブ糸を一本の糸で自在に形成できるという東海理化独自の技術は、従来の技術を飛躍的に向上させるものである。

「カーボンナノチューブの糸で発電を行う場合、正の電圧を発生するP型のナノチューブ糸と、負の電圧を発生するN型のナノチューブ糸が必要となのですが、N型のナノチューブ糸を作製することは非常に困難だとされてきました。しかし、東海理化では、独自の技術によって、カーボンナノチューブ糸に化学処理を行い、P型、N型を一本の糸に自在に形成させることに成功したのです」(松浦氏)

それによって実現したのが「カーボンナノチューブ糸を用いた熱電発電技術」という訳だ。

これがカーボンナノチューブ糸。見た目にはただの糸にしか見えない。強度が非常に高く、軽量で、導電性に優れているという特徴を持っている。

P型、N型を自在に形成できる東海理化独自の技術を研究に応用

著者
那須野明彦

1970年東京生まれ。趣味はバイクとプラモ。自動車専門誌、モノ情報誌の編集者を経て、2008年にフリーのライター・編集者として独立。自動車専門誌ではカーグッズやカーナビ、オーディオなどのインプレ記事を数多く手がける。現在は企業のオウンドメディア、自動車コラム、カーグッズ紹介記事、DIY書籍、DIYのノウハウコンテンツなどを執筆。

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