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富山大学、EVクラス初挑戦で特別賞を受賞。最難関「バッテリー製作」試行錯誤の道のり|学生フォーミュラ2024

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富山大学、EVクラス初挑戦で特別賞を受賞。最難関「バッテリー製作」試行錯誤の道のり|学生フォーミュラ2024
富山大学、EVクラス初挑戦で特別賞を受賞。最難関「バッテリー製作」試行錯誤の道のり|学生フォーミュラ2024

学生フォーミュラにEV化の影響が押し寄せている。2023年には東京大学、名古屋工業大学、山梨大学、静岡工科自動車大学校の4校が内燃機関自動車(ICV)から電気自動車(EV)にクラスを変更。静的審査でEVが上位を占めるなど、存在感を高めている。2024年には、富山大学がICVからEVへ移行。ガソリン車からEV化への移行にはどのような苦労があったのだろうか。サプライヤー企業との連携や他大学との交流などについて、富山大学チームの村田昭人さんに話を聞いた。

TEXT&PHOTO:石原 健児(Kenji Ishihara)
主催:公益社団法人自動車技術会

ICVからEVへのクラスチェンジ、その背景とは

フレーム製作はICVのノウハウを応用
フレーム製作はICVのノウハウを応用

富山大学は2010年から学生フォーミュラに参加し、今回で14年目を迎えた。「最初は2年に1度の参加でしたが、今回のマシンは8代目になります」と語るのは、チームで制御系を担当する3年生の村田昭人さん。ICVからEVへのシフトを決断したのは、2022年の大会終了後。2年間の準備期間を経て2024年からEVクラスでの参戦となった。

EV移行の理由について村田さんは、「世界的にEVの流行が進んでおり、学生フォーミュラでも、少しずつEVチームが増えてきていました。スピード面でもICVより速くなる可能性を感じ、EVにシフトしました」と話す。

ゼロから開始、試行錯誤のEV製作

ゼロから始めるEV製作。村田さんらチームは、試行錯誤の連続だったという。フレーム製作にはICVのノウハウが応用できたが、学生フォーミュラのEVクラスでは毎年の作り替えが義務付けられており、同じ設計でも一からの製作が求められる。

駆動系はサプライヤーであるヤマハ発動機からモーターとインバーターのユニットが提供された。

「ヤマハさんからはモーターの最大トルクやトルクカーブについての情報を教えてもらいました。それを参考に、コントロールユニットとモーターユニットをCAN通信でつなぎ駆動させました」(村田さん)

中央にあるのがコントロールユニット
中央にあるのがコントロールユニット

しかし、EVの機器レイアウト、コントロールユニットの使い方や制御方法、部品の選定に関する問題は山積み。

「同じヤマハ製のEVユニットを使用している名古屋工業大学さんや、上智大学さん、東京大学さん、山梨大学さんなど他のチームとも連絡を取り、アドバイスを受けながら進めていきました」(村田さん)

ライバルチーム同士が助け合いながら切磋琢磨するのも学生フォーミュラの魅力だ。

急遽バッテリー枚数を半分以下に削減。困難を極めた「バッテリー製作」

最も製作に苦労したバッテリー部分
最も製作に苦労したバッテリー部分

EVクラスへの移行時、最も苦労したのは動力源となるバッテリーだったという。

「EVの電源は薄い市販のバッテリーを200枚購入し、それを貼り合わせて大きなセグメントにしようと考えました。各バッテリーから配線を伸ばして制御基板とつなげ、セグメントグループ全体はケースで覆う仕様です」(村田さん)

しかし、スケジュールが逼迫したため、急遽バッテリーの枚数を200枚から90枚へと削減せざるを得なかった。それでもバッテリー開発には約半年を要した。

車体後部の様子、レイアウトにも苦労した
車体後部の様子、レイアウトにも苦労した

バランスの良い車体が完成、いざ大会へ

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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