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JFE精密の高精度冷間鍛造部品が「ひび割れ」を起こしにくい理由。精緻な自動車部品づくりを支える"3つの要素"とは|第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-

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JFE精密の高精度冷間鍛造部品が「ひび割れ」を起こしにくい理由。精緻な自動車部品づくりを支える"3つの要素"とは|第3回 オートモーティブ ワールド【秋】-クルマの先端技術展-

「冷間鍛造」とは、金属を常温のまま圧力を加え、変形させながら成形加工する技術である。金属は一定以上の圧力を受けると元の形に戻らない「塑性」を示すため、「塑性加工」とも呼ばれている。

JFE精密株式会社は、この冷間鍛造技術を駆使し、AT・MTミッション部品や電動パワーステアリング部品、電装部品など各種部品を製造している。同社の冷間鍛造製品は、滑らかで美しい仕上がりが特徴で業界内で高い評価を受けている。実際に、車業界関係者が「この形状で、よくひびが割れませんね」と、驚きを示すほどだという。こうした。高い評価を受けるJFE精密の冷間鍛造技術はどのような点で優れているのか。冷間鍛造事業部 冷間鍛造営業部 主席の岩本年也氏に話を伺った。


TEXT&PHOTO:夏野 久万(Kuma Natsukuma)
主催:RX Japan株式会社
冷間鍛造事業ホームページ:https://www.jfe-seimitsu.co.jp/cf/

滑らかで美しい、JFE精密の冷間鍛造製品を支える技術

JFE精密が手掛ける中空・長尺の高精度冷間鍛造品は、その技術力の高さに定評があり、大手自動車メーカーでも広く採用されている。同社の冷間鍛造技術の中でも、特に注目されているのが「一発穴抜き技術」である。冷間鍛造で筒状に空洞を作る際、一般的には両側からパンチで打ち込んで中空を作るのが主流であるが、JEF精密では長丸棒切断材に一発で貫通穴を作る独自の技術を採用している。

岩本氏によると、この「一発穴抜き技術」では、穴径の6倍の長さを一工程で穴抜きができるとのことだ。さらに、この技術を用いて、内径30mmまで、全長300mmまでのパイプ形状を成形することが可能であり、プレスで押し出すことで段差を付けることもできるという。この技術により、従来の複数工程を要していた中空形成を、効率的かつ精度の高い一工程で実現している。

※製造可能範囲(資料より引用)

高精度を支える独自の成形プロセス

JFE精密の冷間鍛造プロセスは、複雑な形状を効率的に成形する点で独自の強みを持つ。
まず冷間鍛造用丸棒切断材を使用し、「一発穴抜き技術」により上面から加圧して穴を貫通させる。これにより、内径は非常に滑らかになり、追加加工を必要とせずに次の工程に進めることができる。その後、中空長尺成形に移り、外径を金型で固定しながら拡径パンチで内径を広げ、長尺化と内径拡大を同時に実現する。一工程で、内径の10倍の長さまで成形できるこの技術は、外径の拡張や絞りにも対応できる点が強みだ。

製造する部品によっては、鍔(つば)付きの形状をはじめ、軸やシャフトなどに歯状の溝をつくるスプライン加工が必要なケースもある。このスプライン加工では、オス型とメス型の歯状の溝が正確に噛み合う必要があるため、極めて高い精度が求められる。「JFE精密のスプラインは、インボリュート曲線を用いた形状を採用し、点で接触するようにつくられています」と岩本氏は語る。

インボリュート曲線は、円筒に糸を巻きつけた際に描く自然な曲線で、形状がシンプルなため加工がしやすい特徴がある。これにより、歯すじの誤差を約0.004mmに抑え、切削加工をせずにそのまま使用できる製品を作りだしている。この精巧なスプライン加工技術は、大手自動車メーカーでも評価されている。

JEF精密の冷間鍛造製品が「ひび割れ」を防ぐ理由

JFE精密の冷間鍛造技術が「ひび割れ」を防ぐ理由は、特殊な金型構造にある。岩本氏は、顧客からなぜ内径を拡大できるのですか?」「ひび割れを起こさずに、鍔付きの形状がつくれてすごいですね」と驚かれることが多いと語る。詳しい金型の形状については非公開であるが、同社の高精度冷間鍛造品を支える、三つの要素がこの技術を実現している。

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