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【海外技術情報】ノースボルト:エット工場の拡張プロジェクトを管理する子会社が破産申請

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【海外技術情報】ノースボルト:エット工場の拡張プロジェクトを管理する子会社が破産申請

BEV化を強力に推進するEUの象徴の一つが、独立系バッテリーメーカーであるスウェーデンのノースボルトだ。ところがそのノースボルトが苦境に陥っている。2024年6月に工場計画の見直しを、その翌月にはBMWからの受注取り消しを受けて工場拡張計画の見直しを、さらに9月には同国中部に取得していた工業用地の売却を発表。バッテリー需要の伸び悩みが直撃した格好だ。そして10月、同社工場の本丸であるEtt工場の拡張プロジェクトが頓挫。Ett拡張プロジェクトを管理する子会社が破産申請したことを発表した。

独立系バッテリーメーカー、ノースボルトが苦境にあえいでる

ノースボルトは2015年、テスラでサプライチェーン構築や事業計画を担当していたピーター・カールソン(現在のCEO)とパオロ・チェルッティ(現在は北米ノースボルトのCEO)によりSGFエナジーとして創業。

2017年にノースボルトへと改称、2019年には欧州投資銀行から約3.5億ドルの融資を受けた。2020年、銀行、年金基金などからなる融資団から、上記3.5億を含む総額16億ドルの融資を受けることを発表していた。

同じスウェーデンを本拠地とするボルボから受注を獲得したが、特に同社と関係が深いのはドイツだ。VWは9億ユーロを投資して同社株式の20%を取得。さらに合弁会社を設立して、2024年初までにドイツ北部ザルツギッター(VWの工場がある)に年間16GWhの生産能力を有するバッテリー工場の操業を開始する計画を発表していた。

またBMWは2018年、同社とバッテリーセルの研究開発での協力に合意。さらに2020年には、同社が新設するシェレフテオ工場(Ett)から20億ユーロ分にもなるバッテリーセルを調達することでも合意したが、2024年6月、納入期限が守られなかったことを理由にキャンセルされた。

2024年9月、同社はスウェーデン国内における事業計画の見直しを発表した。それによると、2023年売上は目標に遠く及ばず1.28億ドルに留まり、その影響を受けて、従業員の20%に相当する1,600人(内訳はシェレフテオ=Ett:1,000人)、ヴェステロース:400人、ストックホルム:200人)もの従業員を解雇することを発表した。本丸ともいえるEtt工場を2024年までに16GWhに、将来的には30GWhへ、最終的には60GWhにまで拡張する計画であったが、それを停止する。

Ett工場拡張プロジェクトの管理子会社が破産申請

今回の発表は、9月に発表したEtt工場拡張プロジェクトの停止にともなうもの。拡張プロジェクト管理を担う子会社が破産申請した。

9月にEtt拡張プロジェクトの停止を発表して以降、プロジェクトに関するすべての作業は停止していたが、今後は管理子会社とのすべての連絡は破産管財人により管理される。

CEO兼共同創設者であるピーター・カールソン氏は以下のようにコメントした。

「電動化には依然として勢いがあるものの、市場や事業環境全体の逆風に対応して、適切なタイミングで適切な行動を取る必要がある。

当社は保有するすべてのエネルギーと資本をコアビジネスに集中させる必要がある。Ett工場の生産能力増強は、お客様への製品提供と、当社の持続可能な事業運営を実現するのに不可欠。今回の決定は厳しいものであるが、当社の将来にとって必要なものである」

当面のヨーロッパからの注文に対する国内生産は現在のEtt工場で十分という判断であり、それに合わせて国内事業を縮小して行くことになる。

著者
川島礼二郎
テクニカルライター

1973年神奈川県生まれ。大学卒業後、青年海外協力隊員としてケニアに赴任。帰国後、二輪車専門誌、機械系専門書の編集者等を経て独立。フリーランスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに執筆している。

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