開く
NEWS

大同特殊鋼、低周波における磁気ノイズ抑制効果のあるパーマロイ箔を販売開始

公開日:
更新日:
大同特殊鋼、低周波における磁気ノイズ抑制効果のあるパーマロイ箔を販売開始

大同特殊鋼のパーマロイ箔「STARPAS」は、通信技術やIoT機器の高周波化、自動車の電動化に伴い発生するEMCノイズの抑制効果をもつ。同社は2023年1月、約100kHz以下の低周波において優れた特性を有するSTARPAS-50PC2Sを新たにラインナップに追加し発売した。

STARPAS-50PC2S
STARPAS-50PC2S

大同特殊鋼のパーマロイ(※3)箔「STARPAS」は、通信技術やIoT機器(※1)の高周波化、自動車の電動化に伴い発生するEMCノイズ(※2、主に磁気ノイズ)の抑制効果をもつ。同社は2023年1月、約100kHz以下の低周波において優れた特性を有するSTARPAS-50PC2Sを新たにラインナップに追加し発売した。

STARPASには、高透磁率材(※4)MEN PC-2Sを用いた弱いノイズを高感度に抑制できるPC2Sシリーズと、高飽和磁束密度材(※5)5DF42Nを用いた強磁界ノイズに対応したDF42Nシリーズがある。これらは、いずれも30μm厚以下のシールド材で、主にMHz帯までの中周波帯ノイズの抑制効果があるという。

今回の新製品では、高感度用のPC2Sシリーズの厚みを50μmとし熱処理を工夫することで、特に低周波でのシールド性向上に成功した。曲げや打ち抜きなどの加工性に優れ、機器への貼り付けが容易なパーマロイで低周波向けのシールド材を開発したことで、低周波における最適なシールド設計を実現し、電動車や自動運転技術で使用される機器の軽量化や薄型化に貢献する。

大同特殊鋼は、今後も多様化するEMCノイズの対策設計に対して有効な部材を提供していくという。

※MEN、STARPAS は大同特殊鋼株式会社の登録商標

背景

新製品の磁気シールド性結果(シミュレーションによる)
新製品の磁気シールド性結果(シミュレーションによる)

近年、車の電動化や自動運転技術などの進化により、EMCノイズへの対策が重要になっている。電子機器の正常な動作の妨げとなり、場合によっては機能停止や誤動作の原因となる。

EMCノイズには、その周波数帯に応じた対策材料がある。大同特殊鋼は、低周波用にパーマロイを提供するとともに、それを箔化することでMHz帯までの中周波帯にも対応可能な製品をラインナップしてきた。一般的に、低周波ではEMCノイズに対するシールド効果を得るために、一定の厚みの材料を使用する。場合によっては、過剰なシールドとなり機器の軽量化を妨げたり、ナノ結晶などでは製品への貼り付け時に曲げや打ち抜きなどの加工により性能が低下する。このため、低周波において軽量化が可能で加工性に優れたシールド材が求められてきた。

今後、車などの移動体では、金属材料から炭素繊維複合材料などへの置き換えで軽量化が進む中、ノイズの強度に対して最適な厚みのシールド材を選択するなどEMC対策との両立が求められる。大同特殊鋼は、約100kHz以下の帯域でシールド性を有する軽量な部材として、従来材に対し性能の高い製品を開発した。

本製品の特長

低周波におけるシールド性

ISO11452-8磁界イミュニティ試験の実測結果(試験レベルⅠ)
ISO11452-8磁界イミュニティ試験の実測結果(試験レベルⅠ)
ISO11452-8磁界イミュニティ試験の実測結果(試験レベルⅣ)
ISO11452-8磁界イミュニティ試験の実測結果(試験レベルⅣ)

今回の製品は、磁界強度が低い試験レベルⅠでは、従来の高感度シリーズ(30PC2S)よりもシールド性は高く、また、磁界強度が高い試験レベルⅣにおいても、従来の強磁界シリーズ(30DF42N)より優れた性能を示している。

一般的にシールド性能は厚みによって向上するが、必要以上の厚みの対策材では過剰なシールドとなるため、本製品により適切な効果と厚みを提供することで機器の軽量化に貢献する。

加工性

また、本製品は従来通り加工性に優れており、曲面への貼り付けが可能で、従来材と併せてラミネートなどによる積層にも対応しているのが特徴。

今回、STARPASにシート厚のバリエーションを増やすことで、多様化するEMC対策の設計部材を提供することが可能になった。ノイズの特徴に応じた最適なシールド設計で、機器の軽量化や薄型化に貢献する。

用語説明

※1:IoT機器
インターネットに接続されたあらゆるモノのこと。センサや通信機能をもつ。

※2a:EMC
Electromagnetic Compatibilityの頭文字で、電磁両立性を示す。

※2b:EMCノイズ
電気機器などで交流の電流から発生する電磁波で、その発生が意図されていないもの。

※3:パーマロイ
軟磁性材(磁石にくっつく材料であり、磁石の磁場を取り除くと磁気がなくなる)の一種であり、その中で透磁率が最も高い鉄ニッケル系の合金。

※4:(比)透磁率
磁性を表す数値で、材料の磁化のしやすさ(磁束の通りやすさ)を示したもの。磁場の強さと磁束密度の関係を表した比例定数。磁気シールド性能のひとつの指標。比透磁率は、真空の透磁率(4πx10-7 H/m)に対する相対比率。

※5:飽和磁束密度
材料が許容できる磁束密度の最大値。磁気飽和のしにくさを示す磁気シールド性能のひとつの指標。

※6:磁界イミュニティ
電気機器が電気的ストレス(磁界)に曝された際に耐えうる能力(シールド性)。

PICK UP