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デンソー、初のSiCパワー半導体を用いたインバーターを開発

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デンソー、初のSiCパワー半導体を用いたインバーターを開発

2023年3月31日、デンソー(本社:愛知県刈谷市)は、同社初となるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体を用いたインバーターを開発したことを発表した。本製品は、BluE Nexus(本社:愛知県安城市)の電気駆動モジュールeAxleに組み込まれ、2023年3月30日発売のLEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデルである新型「RZ」に搭載される。

インバーター
インバーター

今回搭載されているSiCパワー半導体は、シリコン(Si)と炭素(C)で構成。電力損失を大幅に低減する半導体材料で造られている。

BEVの動力源となるモーターを駆動・制御する役割を持つインバーターの駆動素子にSiCパワー半導体を採用することにより、従来のSiパワー半導体を用いたインバーターと比べて、特定の走行条件下で電力損失を半減以下にすることに成功。この結果、BEVの電費が向上し航続距離の延伸に貢献する。

開発のポイント

デンソー独自のトレンチMOS構造(※1)を採用したSiCパワー半導体により、高耐圧と低オン抵抗(※2)を両立。発熱による電力損失を低減することで、1チップあたりの出力を向上させた。

製造のポイント

・デンソーと豊田中央研究所との共同開発による高品質化技術をもとに、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託業務による成果を取り込んだSiCエピタキシャルウェハー(※3)を活用。結晶の原子配列の乱れにより、素子が正常に作動しなくなる結晶欠陥の半減を実現した。

・欠陥を低減することにより車載品質を確保し、安定的なSiC素子生産を実現。

パワーカード
パワーカード

デンソーは自社のSiC技術を「REVOSIC (レボシック)」と名付け、ウェハーから素子、パワーカードなどのモジュールに至る総合的な技術開発に取り組んできた。今後は2022年に採択されたグリーンイノベーション基金(GI基金)(※4)も活用しながら、より効率的なエネルギーマネージメントを目指すという。

※1:デンソー独自のトレンチMOS構造
デンソーが特許をもつ、電界緩和技術を使用したトレンチ(溝)ゲートを有する素子。

※2:オン抵抗
電流の流れやすさを示す指標。値が小さいほど電力損失が少ないことを示す。

※3:SiCエピタキシャルウェハー
基板となるSiC結晶上に結晶成長を行い、下地基板の結晶面にそろえて配列をする薄膜成長したウェハー。

※4:グリーンイノベーション基金(GI基金)
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成された基金。デンソーは、次世代パワー半導体デバイス製造技術開発(電動車向け)プロジェクトに助成を受けている。

SiCパワー半導体(レボシック)

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