NTN、「2アーム式補機オートテンショナ」を開発…マイルドハイブリッドの各運転モードでベルト張力を最適に調整
NTNは5月23日、マイルドハイブリッド車(MHEV)のエンジンに使用される補機ベルトシステムのベルト張力を自動調整する「2アーム式補機オートテンショナ」を開発したことを発表した。
2つのアームを連動させるとともに、業界初となるアームの過度な揺動を抑制する新機構を搭載。MHEVの各運転モードにおいて補機駆動ベルトの張力を最適に調整し、エンジンの振動・騒音の低減や省燃費化に貢献する。
開発の背景
エンジンに使用される補機駆動ベルトシステムには、テンショナープーリの位置を調整することでベルトに適切な張力を与えるオートテンショナーが用いられる。オートテンショナーからベルトに加わる力は燃費効率に関わるため、少ない力でベルトに適切な張力を与えることが求められる。
モーターでエンジンの駆動をアシストするMHEVにおいては、クランクプーリーとベルト・スターター・ジェネレーター(BSG※)プーリーが使用され、走行モードによりいずれかのプーリーがベルトを駆動する。駆動するプーリーが切り替わるとベルトの緩み箇所が入れ替わるため、従来はこの2カ所の張力調整に2つのオートテンショナーが必要となり、重量や取り付け工数の増加につながっていた。
※ジェネレーターの機能と、アイドリングストップからベルトを介してクランクシャフトを回転させエンジンを再始動するスターター・モーター機能を持つ補機の呼称
開発品の特長
1.省燃費
2組のアームとテンショナープーリを連結させ、片側のアームの動きにもう一方のアームの動きを連動させる構造を採用している。この構造により片側のベルトが張るとアームが揺動し、もう一方のベルトの緩みを調整できる。オートテンショナーからベルトに適切な張りを与え、燃費の向上に貢献する。
2.静粛性
駆動源の切り替えに伴うアームの過度な揺動を抑制する新機構を業界で初めて採用した。異音や振動の原因となる、ベルトの過大振れを抑制する。
3.軽量化
従来品を2個使用した場合と比較して、約60%の軽量化を実現。省燃費化に貢献する。
開発品を適用した補機ベルトシステム例
各運転モードにおいて駆動源に引っ張られるベルトに張りが生じると、そのベルトにテンショナープーリーが押し出されることでアームが揺動する。もう一方のテンショナープーリーは、ベルトを押すことで緩みを自動補正する。
用途
マイルドハイブリッド車(MHEV)用エンジン 補機駆動ベルトの張力調整
参考
MHEVの走行モード
MHEVにはエンジンによる駆動力で走行する通常運転モードに加えて、モーターでエンジンを再始動するスターターモード、加速時にエンジンのトルクをサポートするアシストモード、減速時の回生モードなどがある。通常運転や回生モードではエンジンが駆動源に、スターターモードとアシストモードではベルト・スターター・ジェネレーター(BSG)が駆動源となる。運転モードによって駆動源が切り替わるため、ベルトの緩み箇所が異なる。
補機駆動ベルトシステムにおけるオートテンショナーの役割
補機駆動ベルトシステムは、エンジンのクランクシャフトの駆動力をプーリーとベルトを介して伝達することで、エアコンのコンプレッサーやウォーターポンプなどの補機を駆動する。補機駆動ベルトシステムのベルト張力が不足すると、スリップや振動が発生し静粛性の悪化につながる。一方で、張力が大きくなるほどベルトを駆動する際のフリクションロス(摩擦損失)が大きくなり、燃費が悪化する。このため、補機駆動ベルトシステムにはテンショナープーリの位置を自動調節し、適切な張力を与えるオートテンショナーが用いられる。