災害時の利用も想定:スズキ エブリィベースの軽キャンピングカー「Off time Base」を公開【東京オートサロン2024】
1998年からキャンピングカー用のエア・サスペンションの開発、軽キャンピングカーの製造・販売を行っている株式会社スマイルファクトリーは東京オートサロン2024で、これまでの軽キャンピングカーの集大成である「Off time Base」を発表した。
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TEXT&PHOTO:石原 健児(Kenji Ishihara)
神は細部に宿る、Off time Baseは“こだわり”の塊
Off time Baseはスズキのエブリィをベースにした軽キャンピングカー「Luana」の最上位モデルとなる。貨物車を活用した車体は乗り心地や利便性向上のため、オリジナル設計のサスペンションで足回りの強化を行った。フロントサスペンションはテイン社とのコラボレーション。リアサスペンションは自社開発し、標準のエブリィに比べ7cm近いリフトアップを実現した。足回りは、設計からテストまで1年半の時間を要した。
リフトアップの背景は、悪路や雪国で走行したい、というユーザーからのからの声を採り入れたからだという。加えて、車中泊、キャンプ、釣りなど多用途での使用に耐えるよう、トータルバランスを考えてセッティングを行った。
代表取締役の長藤隆司 氏は「この車は私のこだわりの塊です」と語る。
特に思い入れがあるのは、屋根の上で横に開くポップアップルーフだ。横開きにすることで空間を広く確保でき、大人2人が横になれる。ルーフには4か所の開口部を設けており、通気性や眺望を確保できる。開口部には防虫ネットを完備しており、夏場でも過ごしやすい。長藤氏はかつて英国で見たキャンピングカーメーカー、ウエストファリア社の仕様を国内で実現したいと考えた。
このポップアップルーフは、開発時に最も苦労したところだ。「幌部分の開閉システムの開発では最適な強度を算出するため何度も試行錯誤を行い、最終的に厚さ約6mmのFRPを採用しました」(長藤氏)。見学者からは「めずらしい」「すごいよね」という声が聞かれ、広さを実感する声も多いという。
車中泊も、リモートワークも、これ一台
快適な車内空間の実現には、電気製品の使用も欠かせない。Off time Baseは車本体のバッテリーとは別に、キャンプ用に100Vのバッテリーを用意。(100アンペア:リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)バッテリーは重量バランスを考え、車体下部にレイアウトしている。
電気容量は「お湯を沸かしたい」「エアコンを使いたい」などユーザーのニーズを聴き、最適なものを提案する。また、車内各所に断熱材を導入し、夏場や冬場の車内環境に配慮した。
製作の最終工程は実地試験だ。スマイルファクトリーでは、全国20数か所で開催されるキャンピングカーイベントに、実際の展示用車を走らせ参加。商品の耐久テストも兼ねた年間走行距離は、およそ3万kmに及んだという。今では関東を中心に全国各地から問い合わせがある。
キャンピングカーの用途は車中泊だけではない。コロナ禍以降は、リモートワークとしての需要も増えたという。Wi-Fiルーターだけ用意すれば、デスクワークができるからだ。スマイルファクトリーの場合、今や全体の3割から4割ほどのユーザーがリモートワーク目的で購入するという。
キャンピングカーの「シェルター」としての顔
また、災害大国日本では、キャンピングカーは有事の際のシェルターとしての役割も期待される。実際、災害が起こるたびに、ファミリー層から問い合わせがあるという。「購入者のほぼすべてが、シェルターとしての利用を視野に入れ購入されています。」と長藤氏。シェルターとしての潜在的なニーズの多さを感じるという。
スマイルファクトリーは2023年から東京オートサロンへ参加している。長藤代表が出展を決めたのは、一般の方にも「あっ、こんな車もあるんだ!」とキャンピングカーに興味を持ってほしい、という思いからだ。展示会などで目にした方は、車内のベットの展開状態やポップアップの様子、広さなどさまざまな視点で興味を持ってくれるという。
「キャンピングカーを持つ一番のメリットは生活を有意義に、豊かにできることです。加えて、シェルターとしても活用してくれれば、開発者としてこれほどうれしいことはありません。」と語る長藤代表。東京オートサロン202に出展するモデルが完成したのは、搬入日直前なのだとか。利用者により良いものを届けたい、という想いが根底にあるそうだ。今後もユーザーのニーズや要望を採り入れ、より良いものを作り出していきたい、と胸の内を熱く語った。