モータースポーツを駆動系からサポートする:EXEDY クラッチ&フライホイール【東京オートサロン2024】
走り屋といえばマニュアル車をこよなく愛する人が多い。オートマチック車が増加する現代でも、あえてミッションを選択し、ドライバーの思いのままに操作したいというニーズは少なくない。駆動系パーツで世界をリードするEXEDYは、新商品を引っ提げて東京オートサロンに出展。営業本部の木田 和馬氏に話を聞いた。
[西ホール1]
TEXT&PHOTO 久保田幹也
「限界ギリギリを攻める」フライホイール開発秘話
スピードを求めるドライバーにとって、軽量化できる箇所は軽量化したいのが基本的な考え方だ。シートの取り外しはもちろんのこと、不要なインパネも取り払い、車両全体を軽くしようと必死なのである。
その波はフライホイールにまで及んでいた。通常、フライホイールは熱による変形などをなくすため、厚みも重量もある、まさに「鉄の塊」と呼ぶにふさわしいものだ。曲がったり折れたりなども言語道断な部品なだけに、無茶な軽量化はできない。筆者も整備士時代にフライホイールを幾度となく見てきたが、それが常識だと思い込んでいた。
ところが、EXEDYが展示していたフライホイールは、穴だらけなのである。鉄の塊という日本語がしっくりくる部品であったはずなのに、そのような面影は一切ない。見た目からして軽量化に成功したフライホイールの姿がそこにはあった。
木田氏は、このフライホイールを「限界ギリギリで作った」と語る。例に上がったGR86の場合、あまりに軽量なフライホイールにしてしまうとエンジンチェックランプが点灯するという。コンピューターからしてもあまり軽いと誤作動を起こしてしまうそうだ。
同時に懸念すべきは熱による変形の可能性である。フライホイールには膨大な負荷がかかるほか、モータースポーツのような環境下では超高温にさらされる。鋳物とはいえ鉄であるため、極度の負荷や高熱によって変形する可能性もゼロとはいい切れない。
そのようなリスクも加味したうえで、展示のような「穴だらけのフライホイール」が生まれていると考えると、駆動系パーツの世界的企業としてのプライドといっても過言ではないだろう。
トヨタGR86 スーパー耐久シリーズ2023でのテストと成果
EXEDYに開発力があることは間違いないが、最終的には実車に装着して様子を見るしかない。摩擦係数の測定などの観点からも、実地で開発した駆動系パーツを試してみなければわからないだろう。
今回の東京オートサロンでは、スーパー耐久シリーズ2023で使われたトヨタ GR86が展示されていた。その車両にも当然EXEDYのクラッチが装備されているという。実際のレースで使ってみることで、テスト走行だけではわからないデータも収集できるのである。
駆動系部品は、自動車の心臓といっても過言ではない。それだけに、車そのものに異常な負荷がかかるようなパーツの開発や使い方、ドライバーの安全を脅かすようなことはできないだろう。「純正品をベースにしつつ、性能が落ちないぎりぎりのラインで開発を続けてきた」と語る木田氏。これからもEXEDYの開発への並々ならぬ熱量は変わらないだろう。