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バッテリー交換式BEVの検討、15年前はどうだったか[ベタープレイス]

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バッテリー交換式BEVの検討、15年前はどうだったか[ベタープレイス]

リチウムイオン電池を大量に積む必要のあるBEV。そこにはコストや重量、そして大電力量を確保したが故の管理の難しさ、充電時間の長さ、急速充電に伴う劣化に対する対策などが要されるのが悩ましいところ。ならば交換式にしてみては——という検討が浮上している。当然そのような検討は古くからなされていて、ここ日本でもベタープレイスという会社がステーション交換式BEVを提唱していた。2009年6月当時のレポートをここで振り返ってみよう。

(以下、2009年6月当時のレポート)

ベタープレイスが提案する「携帯電話型」EVビジネスモデル

イスラエルで電気自動車用バッテリー交換ステーションの整備を進めるベンチャー企業が、日本でバッテリー交換のデモンストレーションを行なった。バッテリーはリース。走行距離に応じて利用料を課金するシステムに、ユーザーはどう反応するか。

TEXT:世良耕太(Kota SERA) PHOTO:瀬谷正弘(Masahiro SEYA)/MFi

携帯電話が出回り始めた頃は、それを持っていることがステータスだった。たとえ都市部を離れれば「圏外」になったとしても。基地局が整備された現在では、日本中、いや、世界の主要なエリアで不自由なく会話、そして通信を行なうことができる。いつでもどこでも質の高いサービスが受けられる事実が、端末のセールスを後押ししている。

同じ考えを電気自動車の世界に持ち込もうとしているのが、「電気自動車のサービスプロバイダー」を標榜するベタープレイスだ。大きく・重たく・高価なバッテリーが、小さく・軽く・安くならなければ電気自動車の普及はありえないとする既成概念を否定。バッテリー交換ステーションを広範囲に整備すれば、「航続距離が短く不便」「充電スポットが少ないので遠出は不安」という、現時点での電気自動車が持つネガティブな側面が解消。インフラの整備が普及を加速させるという発想だ。

現実に、プロジェクトは進行している。四国より約15%広い国土面積を持つイスラエルは、国家戦略として脱石油社会の構築を推進中。その大きな足場となるのが電気自動車の普及で、ベタープレイスは充電網の整備に取りかかっている。2011年をめどに、100ヵ所のバッテリー交換ステーション、50万基の充電スタンドを設置する計画だ。同様の計画はデンマークでも進んでいる。

2009年4月27日から、ベタープレイスは横浜に設けた拠点で、バッテリー交換ステーションの実証試験を開始。5月から一般公開を始めた。イスラエルで整備が進むバッテリー交換ステーションの一部を取り出し、日本に持ち込んだと理解すればいい。環境省が主導する次世代自動車導入促進計画事業の一環である。

デモンストレーションを行なうクルマは日産デュアリスだが、事業とは無関係。ベタープレイスが国内のディーラーで購入後、アメリカで電気自動車に改造し、日本に持ち込んだもの。ガソリン自動車のパワートレーンと燃料タンクを取り外し、モーターとバッテリーパックを取り付けた。バッテリー交換作業は完全自動。コンベアーに載ったクルマは所定の位置に止まると、床下からパネルが上昇してバッテリーを取り外し、横で待機していた充電済みのバッテリーに交換する仕組み。車両側とステーション側はブルートゥースで情報のやりとりを行なう。
3人並んだ左の人物がベタープレイス創業者兼CEOのシャイ・アガシ氏。独SAPのプロダクト・アンド・テクノロジーグループ社長を務めた経歴を持つ。バッテリー交換ステーションと充電スタンドの整備を進めるイスラエルでは、ルノー・日産アライアンスと提携。ルノーが、リチウムイオン電池を搭載した電気自動車(メガーヌ)を準備する。ユーザーは、車両を購入~所有し、キロ単位の走行距離をベースに、バッテリーの使用量に応じた供給契約を結ぶ。通話料・通信料に応じて料金を支払う携帯電話と似たビジネスモデル。
著者
Motor Fan illustrated

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