AD/ADASに存在する"空白領域"|神奈川工科大学の井上秀雄教授に訊く【AD/ADASの現状をおさらいする Vol. 4】
じつは現在のAD/ADASには、カメラによる画像認識能力の限界からシステムの回避動作が間に合わず、ドライバーが対応せざるを得ないという「空白領域」が存在する。こうしたAD/ADASの安全性における評価手法を研究しているのが、神奈川工科大学の井上教授である。
TEXT:髙橋一平(Ippey TAKAHASHI) PHOTO:MFi FIGURE:KAIT
いや、正直驚いた。神奈川工科大学 先進自動車研究所のシミュレーターを体験した第一印象だ。これまで取材を通して、さまざまなドライビングシミュレーターを体験してきたが、画像のリアルさにおいては、間違いなくNo.1だ。「これ、本当にCGですよね?」と、シミュレーターの画面を見ながら、何度も聞いてしまったほどである。
シミュレーターといっても、取材時のそれは運転操作に連動はなく、あらかじめシミュレーションで生成した前方風景のグラフィックをスクリーンに投影するだけのものであったのだが、それでも前述のような驚嘆の句が無意識のうちに漏れてしまった。当然というか、走行音もなければ、車体はピクリとも揺れない。そこに驚くほどリアルな前方風景が広がるというのは、ある意味異質な体験でもあった。
さて、このリアルなシミュレーション画像が、まったく無関係というわけではないのだが、本題は別のところにある。トップの写真でスクリーン上に映し出されている、隣車線(ここでは左側車線)を並走する大型トラックが、自分の車両に割り込んでくるというシチュエーションである。井上教授によれば、この状況においては、現在車載されているAD/ADASシステムの多くで、回避動作(この場合はブレーキの作動、減速)が間に合わず、ドライバー自らがブレーキ操作をすることになるのだというのだ。