NSK、サーボモーター用低発塵・高機能軸受を開発。新開発のグリースとシールにより、低発塵性に加え長寿命と低トルクを実現
日本精工(以下、NSK)は、産業用ロボットなど産業機械の安定稼働に貢献する「サーボモータ用低発塵・高機能軸受」開発を発表した。不具合事象の発生メカニズム解明と評価試験方法の高精度化により、改良すべき要素を明確化。さらに、グリース・シールを新開発することで、従来比2倍の低発塵性※1を実現させている。
開発の背景
NSKは2024年度に本製品のサンプル品の受注を開始し、2026年度に売上15億円を目指す。また今回開発されたグリース・シールは、今後、サーボモータ用だけではなく、低発塵性が要求される他製品向けにも展開を進め、幅広い産業機械の更なる稼働安定化への貢献が目指されている。
※1 低発塵性:軸受内部からグリースや油が飛散しにくい性能。労働人口の減少や産業の自動化に伴い、ロボット用サーボモータの市場規模は拡大傾向にある。ロボット用サーボモータは、ロボットの関節部分などに搭載され、高温・急な加減速など過酷な環境の中で、ロボットの動作の位置や速度を精密に制御し、正確な位置決めを担っている。
サーボモータに搭載される軸受は、エンコーダやブレーキなど、正確な位置決めに不可欠な機能部品の傍に配置されており、軸受のグリースや油が飛散するとこれらのディスクに付着する事象(ディスク汚染)が発生する。その結果、油分付着によりエンコーダの読み込みエラーや、ブレーキが滑るなどの不具合が発生し、ロボット稼働停止に至る可能性がある。このため、以前より軸受には低発塵性が要求され、飛散しにくいグリースや密封性の高いシールの開発が進められてきた。
昨今のロボットの高精度化やその市場拡大のため、サーボモータには更なる高信頼性が求められ、そのため軸受にはより高い低発塵性が要求されるようになった。しかし、ディスク汚染の発生メカニズムが未解明なことや、従来の低発塵性の評価試験方法では精度の高い評価ができない、などの課題があった。
製品の技術
1) ディスク汚染の発生メカニズムを解明
ディスク汚染が発生するメカニズムを推定し、現象の可視化と評価試験による検証で推定を裏付け。
2) 評価試験方法の高精度化
NSKの評価再現技術を活かし、実際のサーボモータに近い構造・環境の試験機を作製。結果、精密な試験結果を示せるようになり、より低発塵性に優れた製品の開発を実現。
3) 設計要素の高度化
上記のメカニズム解明と試験方法の高度化により、改良すべき設計要素を明確化。NSKが長年培ってきたトライボロジー技術※2により、低発塵性に優れたグリースやシールの開発を実現。
※2 トライボロジー技術:摩擦や摩耗をグリースや材料表面で制御する技術
製品の特長
新開発のグリース・シールで、従来比2倍の低発塵性を実現。さらに、グリースの長寿命化とシールの低トルク化も両立させている。
1) 新開発グリース:高温環境での蒸発を抑制し、耐熱性に優れた組成を選定することで、下記を実現。
・低発塵性能 従来比2倍
・焼き付き寿命性 従来比2倍
2) 新開発ゴムシール:新リップ※3形状設計の開発により、下記を実現。
・低発塵性能 従来比2倍
・低トルク化(シールと内輪の接触摩擦を低減) 従来比△10%
※3 リップ:内輪と接触するシールの先端部分