三菱自動車、「エクスパンダー」「エクスパンダー クロス」のHEVモデルを世界初披露
三菱自動車工業は2月1日、クロスオーバーMPVの「エクスパンダー」「エクスパンダー クロス」に電気自動車(EV)モデルを新たに設定しタイ・バンコクで世界初披露するとともに、同国での販売を開始した。
「エクスパンダー」はMPVらしい居住性と多用途性、SUVの力強いスタイリングと走りを組み合わせたクロスオーバーMPV。2017年にインドネシアで発売し、アセアン、中南米、中東などに展開。2019年には最上位モデルとして「エクスパンダー クロス」を設定した。シリーズとしての2022年度のグローバル販売台数は、「トライトン」「アウトランダー」に続く3番目で、「エクスパンダー」「エクスパンダー クロス」の累計で13万台以上を販売している。
今回、新たに設定するHEVモデルでは、三菱自動車が得意としている電動化技術と、四輪制御技術を融合。プラグインハイブリッドEV(PHEV)から派生した新開発のHEVシステムによってEVらしい環境に配慮しながら、FF方式の2WDをベースに、アクティブヨーコントロールをはじめとした独自の四輪制御技術による安全な走行、天候や路面状況に応じた走行モード選択を提供。HEVでありながら任意でEV走行を選択できるため、早朝の閑静な住宅街でエンジン音が気になる時など、シチュエーションに応じた走りが可能となる。
新開発のHEVシステムは、EVモード、ハイブリッドモード、回生モードで構成。走行状況や駆動用バッテリー残量に応じてシステムが自動で最適な走行モードを選択して低燃費化するとともに、力強く気持ちのよいモータードライブを実現する。
発進時や低速域では、駆動用バッテリーからの電力でモーター駆動するEVモードで、電気の力だけで走行。登坂時や加速時は、エンジンを発電用として動かして駆動用バッテリーの電力と合わせてモーターで走行し、高速域では、エンジンの動力で走行してモーターがアシストするハイブリッドモードに切り替わる。回生モードでは、減速時に回生ブレーキによって減速エネルギーを回収して電力変換し、駆動用バッテリーに蓄電する。PHEV派生のHEVシステムだからこそ可能となる、燃料消費やCO2排出がゼロのEVらしい静かな走行と、電欠の心配をすることなく長距離ドライブを楽しめるHEVならではの便利さを目指した。
パワートレインには1.6Lガソリンエンジンに、ジェネレーターと最高出力85kWのモーターを組み合わせ、同モデル専用となる駆動用バッテリーを採用。力強いモーターとバッテリーの出力により、発進時のトルクの立ち上がりが早く、ペダルを踏みこむとレスポンス良く加速でき、高速道路でのレーンチェンジや、街中でのUターン後の合流もスムーズに行える。
新開発の「1.6L DOHC 16バルブ MIVEC(※)エンジン」は、高膨張比サイクル化することで燃焼効率を向上させ、三菱自動車のエンジンとして初めて電動ウォーターポンプを採用することで機械損失を低減させた。ガソリンエンジンCVTモデルと比べてエンジン単体燃費を約10%改善し、NEDCモードで市街地走行の燃費は約34%、市街地走行と高速走行を組み合わせた燃費は約15%の低燃費化を実現した。
新開発の7つのドライブモードでは、EV走行のための2つのモードと、路面状況に応じて最適な走行制御を行う5つのモードを設定。
EV走行のための2つのドライブモードでは、ドライバーがシチュエーションに応じて積極的にEV走行を選択できる。エンジンを始動させることなく、駆動用バッテリーからの電力でモーター駆動する「EVプライオリティ」は、静粛性が高く、早朝の住宅街などでも周囲に気兼ねなく走行可能。駆動用バッテリーの残量が少なくなった際には「チャージ」に切り替えてバッテリーに充電でき、再びEV走行を楽しめる。
路面状況に応じたドライブモードは、日常走行でのバランスが取れた「ノーマル」、ワインディングロードなどでキビキビとした走りと意のままのハンドリングを実現する「ターマック」、未舗装路で滑りやすさを抑えて安心感のある操縦性を発揮する「グラベル」、ぬかるんだ悪路でも力強い走破性を発揮する「マッド」、大雨などでもタイヤのスリップを抑えて高い安定性を発揮する「ウェット」の5つ。
FF方式の2WDをベースとし、前輪左右の制動力を制御する「アクティブヨーコントロール」、前輪のスリップを検知すると駆動力を制御する「トラクションコントロール」、加速時のモーターやエンジン出力を調整する「アクセルレスポンス制御」、速度域や路面状況に応じてステアリングの手ごたえを調整する「ステアリング制御」などを統合制御することで、さまざまな路面状況に対応する。
運転席には8インチカラー液晶メーターを採用。スクリーンを広く使ってコンテンツを表示させることで、使いやすさを向上させた。アクセル操作に連動して「エコ」「パワー」「チャージ」状態を示すパワーメーター、エネルギーフロー、EV走行比率、バッテリー残量など、HEVならではの情報を表示する。ドライブモード切り替え時には、ディスプレイ中央に選択したモードのグラフィックを表示させることで、運転中でも直感的にドライブモードを選びやすいよう配慮している。画面は好みに合わせて、先進的なエンハンスモードと、アナログメーターを模したクラシックモードを選択できる。
キャビン内はボディの要所に吸音材や防音材を追加することで、EV走行時だけでなく、加速時や高速走行時などでエンジンが始動した時でも車内の高い静粛性を保てるように配慮した。
ボディカラーは、硬質で高輝度かつ鮮明なカラーリングによってEVらしいクリーンなイメージを与える「ホワイトダイヤモンド」を新たに設定。「ブレードシルバーメタリック」「グラファイトグレーメタリック」「ジェットブラックマイカ」をラインアップし、「エクスパンダー クロス」のHEVモデルではさらに「グリーンブロンズメタリック」も設定した。
両車種はタイにおける生産・販売会社であるミツビシ・モーターズ・タイランドのレムチャバン工場で生産される。
※MIVEC(Mitsubishi Innovative Valve timing Electronic Control system)は、三菱自動車の可変バルブタイミング機構の総称