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これが盗電対策の答えだ。|EVコンセントのIoT化を実現したTerra Chargeの開発力に迫る。

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これが盗電対策の答えだ。|EVコンセントのIoT化を実現したTerra Chargeの開発力に迫る。
EV充電器Terra Charge (画像はプレスリリースより)

3輪EV車両メーカーとして大国インドでトップシェアを誇るTerra Charge株式会社は、2022年春から日本でEV充電インフラ事業に参入し、後発ながらEV充電大手に成長。2023年秋からはインド・タイでもEV充電インフラ事業を立ち上げた。国内では、一般家庭から高速道路、商業施設まで幅広いシーンへEV充電器の設置を進めている。

EV充電器の普及において、「コードの盗難・いたずら」「盗電」「マンション住人の反対」など懸念材料は尽きない。サービス開発時は、数々の障壁をIT技術も駆使しながら一つずつ解決した。今回は、Terra Charge株式会社CTO(最高技術責任者)の高橋 成典氏に、独自開発したIoTデバイスやEV先進国のトラブル事例など、開発秘話をお聞きした。

TEXT:石原健児

EVメーカーがEV充電インフラ事業に参入

EV充電器Terra Charge (画像はプレスリリースより)
「すべての人にEVとエネルギーを。」が企業ミッション (画像はプレスリリースより)

2010年、EV2輪・3輪メーカーとして創業したTerra Charge株式会社(旧:TerraMotors株式会社:以後Terra Charge株式会社)は、2018年に大国インドの3輪市場でシェアナンバーワンを達成した。EV市場での成功を収めた後、2022年、EV・PHEV(プラグインハイブリッド車)向けの充電インフラ事業に参入。参入からわずか2年で、国内に2万5000口の充電器設置を達成した。

なお、同社が提供する充電インフラ設備の名前は「Terra Charge(テラチャージ)」。2024年に変更した社名にも同じ名前を使用しており、新事業への意気込みがうかがえる。

EVユーザーの充電シーンには、自宅や会社で行う「基礎充電」、移動途中に高速道路などで行う「経路充電」、移動先で行う「目的地充電」がある。Terra Charge株式会社では「全ての人にEVとエネルギーを。」という企業ミッションのもと、マンションから商業施設、宿泊施設まで、あらゆる場所へのEV充電設備導入を目指している。「3種類の充電シーン全てに対応できるのが当社の強みです」そう話すのは取締役・CTO(最高技術責任者))高橋 成典氏。高橋氏は、テラチャージ事業のソフトウェアとハードウェアの開発領域の陣頭指揮も取る。

すべての充電シーンに対応可能な充電器をラインナップ (画像はTerra Charge支給)

EVコンセントのIoT化を実現、ハード・ソフトの両面で工夫

Terra Charge株式会社 取締役・CTO(最高技術責任者)高橋 成典氏

テラチャージ事業で、自宅やマンション向けに展開しているのがEVコンセントだ。パナソニック製のEV用コンセントをベースに外付けのIoT機器を追加し、デバイスのIoT化を実現した。スマホとEVコンセントをBluetoothで接続し、スマートコンセントのようにスマホでデバイスをコントロールし充電する。ユーザーはスマホアプリ上で、EVコンセント上面のQRコードを読み取り充電時刻を設定。車載充電ケーブルとEVコンセントをつなぎ充電を開始する。充電終了時はアプリで通知される。

EVコンセントの開発では、海外のEV導入事例の知見を活かし、ハード面・ソフト面ともにユーザーの利便性を重視した。セキュリティ面もその一つ。高橋氏は海外でのトラブル事例をいくつか挙げた。「接続した充電コードが自然に外れたり、いたずらで抜かれたり、盗まれてしまったり、といったトラブルです。」そこで、EVコンセントには車載充電ケーブルの接続部分にカバーを設けた。カバーを閉め、充電をスタートすると充電プラグ部分が自動でロックされ、落下やいたずら、盗難を防止する仕組み。「海外では、EV充電設備をガードマンが警備していることも少なくありません。」と高橋氏。それだけトラブルが多いということだろう。

テラチャージのアプリは、充電器の位置をマップ上に表示する機能はあるが、施設オーナーが公開・非公開を選べる仕様になっている。利用ユーザーを限定して利用できるパスコード「マイ充電器コード」を登録すれば、指定したユーザー以外は充電器がマップ上に表示されない仕組みだ。また仮に、外部の人間が充電しようとしても、権限がないため「この充電器は使えません」と表示され充電ができない。充電量はクラウド上で管理するため電気が盗まれる心配もない。これらの機能はこれまで、国内・海外で得た知見を活用した工夫だ。

シンプルな仕組みでコスト面にも配慮

EVコンセントのデバイス開発では無駄を省き、シンプルさを重視した (画像はTerra Charge支給)
著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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