V2Hによって広がるEVの新しい活用方法
エネルギー問題が囁かれて久しい昨今。
特に2022年から2023年にかけて、ウクライナ情勢や円安などの要因で燃料価格や電気代が高騰、経済面に多大な影響を与えたことは記憶に新しい。
また2030年までに17の目標を達成を目指すSDGsでは、エネルギーへの取り組みも掲げられている。電力を全世界に普及させるためには、化石燃料への依存から脱し、太陽光や風力、地熱など代替的なエネルギー源に移行することが求められている。
またコストを抑えるためには、効率よくエネルギーを使用することが重要だ。
エネルギーの普及とともに期待されているのが関連設備だ。EVなどでよく耳にするV2Hもその内の一つだが、災害への備えや電気代の節約などの利点から注目を集めている。
2024年3月時点のV2Hの市場規模は年間数千台にとどまっているが、2025年には2万4,000台に拡大することが見込まれている。
V2H登場により、将来の暮らしにはどのような変化が生まれるのだろうか。今後、大きな発展が期待されるV2Hの現状と未来を考察する。
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V2Hが注目されている背景
そもそもV2Hとはどのようなもので、どのような仕組みなのだろうか。
V2Hは、Vehicle to Homeの略称のことで「車から家へ」を意味している。
EVバッテリーに蓄えた電力を、自宅やオフィスなどでも利用できることがV2Hの最大の魅力だ。そのため、台風や地震などの災害時の備えとしても利用でき、電気代の節約なども期待できることからも注目を集めている。
EVはこれまで航続距離が短いことが指摘されていた。しかし、自動車メーカーの技術革新の甲斐もあり、近年のEVは航続距離が400~600kmまで伸びている。
これはバッテリーの容量が増えていることを意味しているが、走行していない時間は宝の持ち腐れと言えるだろう。電力エネルギーを効率よく使用するために登場したのがV2Hだ。
EVに蓄えられた電力を自宅やオフィスで利用するには、専用のV2H機器を設置しなければならない。
V2H機器の役割は電気の種類を変換するためのものだ。EVバッテリーに蓄えられた電気は、乾電池と同じ直流。一方、家庭用の電気は交流なので、そのままの状態では自宅やオフィスで利用することはできない。そこで直流から交流、交流から直流に変換するための仕組みが必要になるわけだが、それを可能にしたのがV2H機器なのだ。
V2H機器は、充電部・放電部ともに100Vと200Vを配電できる単相3線式を採用している。これは、家庭で一般的に使用される単相2線式に中性線を1本追加した方式で、電力の安定供給や電力ロス削減が期待できる。
パワーコンディショナー内部には、系統接続用端子、外部電源接続用端子、負荷接続端子などで構成されている。蓄電システムや太陽光発電と接続する端子の間に双方向AC/DCコンバータやDC/DCコンバータなどの電力変換回路を設け、EV/PHEV(プラグインハイブリッド車)のバッテリーと家庭の電力系統の電圧差を調整し、電流を双方向に変換する仕組みだ。