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NSK、 高効率な電力不要ロック機構「ロッキングクラッチ」を開発。幅広い電動アクチュエータの小型化、消費電力低減に貢献

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NSK、 高効率な電力不要ロック機構「ロッキングクラッチ」を開発。幅広い電動アクチュエータの小型化、消費電力低減に貢献
本開発品「ロッキングクラッチ」

日本精工(以下、NSK)は、自動車から産業機械まで幅広い業界の電動アクチュエータの小型化・消費電力低減に貢献する「ロッキングクラッチ」を開発したことを発表した。本開発品は2024年5月22日~24日にパシフィコ横浜で開催予定の「 人とクルマのテクノロジー展2024 YOKOHAMA New Window 」への出展が予定されている。今後顧客でのサンプル評価などを経て市場投入し、2030年までに売上30億円が目指される。

開発の背景

1) 「後輪操舵アクチュエータ」の需要

自動車の電動化や自動運転の普及に伴い、後輪の動きを高精度に自動でコントロールする「後輪操舵アクチュエータ」の需要が高まっています。「後輪操舵アクチュエータ」は、自動車の安全性・乗り心地を高める効果があります。また、車両の回転半径を小さくできる分、ホイールベースが延伸でき、そのスペースにバッテリーを多く搭載できることから、電動車の航続距離延長にも貢献する。

後輪の動きを高精度にコントロールする「後輪操舵アクチュエータ」

2) 「後輪操舵アクチュエータ」の機能

一般的に、従来の「後輪操舵アクチュエータ」では構成部品に滑りねじが採用されており、滑りねじの性能を活かして、以下2つの機能を果たしている。

(1) 駆動機能:モータからの動力をタイヤに伝達する機能(モータの回転運動を、滑りねじによって直線運動に変換することで、タイヤの動きをコントロール)
(2) 位置保持機能:外部からの力をモータに伝えないようにセルフロックする機能(路面からタイヤへ意図せず入力される力を、滑りねじがセルフロックすることで、モータに伝えない)

「後輪操舵アクチュエータ」の駆動機能(左)と、位置保持機能(右)

3) 「後輪操舵アクチュエータ」の課題

滑りねじを採用した「後輪操舵アクチュエータ」は、モータからの動力をタイヤに伝達する駆動機能の伝達効率が低いという課題があった。一方で、この課題を解消するため、滑りねじではなく、伝達効率の高いボールねじを使用した場合は、ボールねじの特性によりセルフロックができず、位置保持する時に電力を消費してしまう、という課題があった。

4) 「後輪操舵アクチュエータ」 課題の解決

セルフロックができるロッキングクラッチを開発し、伝達効率が高いボールねじを組み合わせることで、課題であった後輪操舵アクチュエータの駆動機能の伝達効率向上と、位置保持機能を両立する。

本開発品により、課題を解決

開発品の概要

ロッキングクラッチとは、入力軸からの回転は伝達し、出力軸からの回転はロックする新たな機構のパワーフロー制御クラッチのこと。

入力軸からの回転は伝達(左)、出力軸からの回転はロック(右)
「後輪操舵アクチュエータ」における本開発品の搭載箇所

開発品の特長

1) 高い伝達効率と位置保持機能
NSKの長年培ってきた摩擦コントロール技術で、電力不要にも関わらず、高い伝達効率と確実なロック機能を両立。

2) 「後輪操舵アクチュエータ」の小型化、消費電力低減に貢献
本開発品とボールねじを搭載することで、「後輪操舵アクチュエータ」駆動時の伝達効率向上(従来比約+ 70 %)と、位置保持時のセルフロック機能を実現。

これにより、「後輪操舵アクチュエータ」のモータサイズは、小型化(従来比約- 40 %)が可能となり、消費電力低減に貢献。

3) 自動車から産業機械まで幅広い業界に貢献
自動車の「後輪操舵アクチュエータ」だけでなく、下記のような多くのアプリケーションへの適用を想定。

〇搭載アプリケーションの例:

・自動車:車高調整、電動ドア、電動シート、動力切替クラッチ
・産業機械:AGV、自動搬送ロボットなどのパーキング機構、昇降装置、ロボットアーム、電動シリンダーなど油圧・空圧機器の電動化

著者
Motor Fan illustrated

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