工場ではどのようにクルマが作られていくのか――生産工程の流れ
数万点とも言われる部品数で構成される自動車。これを製品として迅速かつ正確に組み上げるには非常に多くの工夫と手間がかかる。クルマができあがるまでのプロセスについて、それぞれの工程を詳しく紹介していこう。
TEXT:MFi PHOTO:MFi/Nissan/Volkswagen/Audi/Mazda/Honda
自動車工場というと、両側にロボットアームがずらりと並び、その間をホワイトボディが流れていく、ロボットアームからは火花が飛び散る――みたいな絵が使われることが多い印象。これは組立工程におけるワンシーンで、各パネルを溶接によって自動車のボディ形状に組み立てていくプロセス。火花は華やかなイメージがあるが、生産技術の視点からは本来飛んでほしくないスパッタという現象である。
自動車工場でクルマができあがるまでをラフに説明するならば「入れ物を作る」「入れ物に内容物を詰めていく」といったところか。入れ物=ボディは多くが鋼板でできていて、これをプレスと溶接によって自動車用のボディとして仕立てていく。塗装を経たのちに内容物=パワートレーンやドライブトレーン、内装などを順次組み付けていく。エンジンやトランスミッションといった、それ自体でかなりの部品点数にのぼるコンポーネントについてはあらかじめ組み上げておき/サプライヤーなどが組み立てておき、自動車工場に搬入されて出番を待つ。内容物を詰めていく工程では順番に部品を締結していくのを基本として、ライン上での組み付けは難しいものの少々の手間と時間をかければメインラインに再合流できる、というものについてはサブラインでこれを組み立てるという手段をとる。
プレス工程や組立工程、その後の塗装工程では多くが自動化を実現している一方で、最終組立や検査工程ではいまなお作業者=人の手に頼ることが多い。混流生産が常態化する今日ではコストを含め、人間の判断力や作業精度に任せたほうがいいという判断である。
プレス工程
極薄のロール状に巻かれている巨大な鋼板を必要な大きさに切り、プレス機にかけてボディ各部の部品に仕立てていく工程。軽量化が強く求められている昨今では薄板化が図られるが、そうすると強度も剛性も低くなってしまう。デメリットをカバーするためには形状の工夫あるいは材料の代替が必要で、後者については高強度鋼板を用いることでこれを解決する。しかし加工が難しくなるので、プレス工程における工夫や設備の刷新が盛り込まれるようになった。
組立工程
プレス工程でできあがった各部品を各種の接合技術を用いてモノコックボディとして仕立てる工程。日本のOEMではスポット溶接による点接合が主流、一方でドイツ勢は一部レーザーによる線接合によってパネルを組み立てる。高額車ではフルアルミ合金ボディとするモデルも存在、軽量化を図りスチール/アルミ合金などのハイブリッド構造とするケースも増えてきた。接着剤による接合も普及が進んできたが、このあとの塗装工程との折り合いが必要。