シンプルなハイブリッドの可能性|オルタネーターを小型モーターに使い、低出力ながら高頻度のアシスト制御
世界的に60V(ボルト)は高電圧となり安全面の配慮が求められるが、48Vは適用外。たとえ10kW以下の出力でも、発進・加速時のエンジンアシストは燃料セーブ効果が意外に大きい。(改めてハイブリッドが注目される今、ボッシュのBSGを2021年のMotor Fan illustratedから抜粋して紹介する。情報は当時のもの。)
TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO) FIGURE:BMW/BOSCH
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独・ボッシュは2010年以降、すでに250万台分ほどの電動車向けユニットを供給してきた。現在の開発プロジェクトは90あるという。世界中のさまざまな自動車メーカーと取り引きのある世界最大のサプライヤー・グループであるだけに、開発は全方位にわたる。ただし、その中でもこの2年ほどで電動車の将来予測は大きく変わったという。HEV比率が減り、逆に純電動車であるBEV=バッテリー・エレクトリック・ビークルの比率が増えるとの予測だ。
「48V(ボルト)電源を使うMHEV(マイルド・ハイブリッド車)の比率は、グローバルで2030年に全体の20%。これは各社が規制対応した場合のシナリオだ。カーボンニュートラルへの要求が高くなりBEVが増えれば17%程度と思われる。2035年時点では規制対応で17%、BEVが増えれば10%を下回る。自動車需要はどんどん高電圧・大バッテリーになってきた」
しかし、2035年時点でも各種HEVを含めたICE(内燃エンジン)搭載車の比率は40%強だ。市場調査会社の予測も40%台が多いほか、バッテリー生産の動向によってはBEVが頭打ちになる可能性を指摘する予測もある。今回、ボッシュに尋ねたのは48V電源を使って電動アシストを行なうマイルドHEVである。普及に期待がかかるのは、既存のジェネレーター(発電機)と置き換え、10kW程度の車両駆動モーターおよびエネルギー回生発電機として使うBSG(ベルト・スターター・ジェネレーター)だ。
車両の電動化という点では、究極はICEを使わないBEVとFCEVだ。48VのMHEVは燃費向上(つまりCO₂セーブ)効果は最大で8%程度と言われる。その代わりコストが安く車両重量の増加も小さい。BEVの場合、航続距離を欲張って大量のバッテリーを積むとCセグメント車でも車両重量が2トンになる。これはアンビバレント(相反する事象の同時存在)、つまり「どっちつかず」である。ボッシュはこう言う。
「48VのBSGはオルタネーターなのでどのクルマにも装着できる。我々はモーター10kW、バッテリー12〜13kWのワンスペックで対応した。また、48Vだとエンジンを止めるだけでなく回生充電(Recuperation)と動力ブーストができる。パワーネット(ヒーターやシャシーコントロール)への電力供給もできる。また、48Vは車体にグラウンド(アースへ落とすこと)ができる非絶縁であり、すべてのクルマに対応できる。BEVやフルHEVのような飛び道具ではなく、より大きめの車両に普及させることでCO₂削減には面積の効果を発揮できる」
いくつかのデータを見せてもらった。興味深いのは電力回生だ。
「走行エネルギーを100%回生できる量に対し10kWのBSGでも80%強を回収できる。20kWなら90%回生できるので、わざわざ高電圧にして50kWのシステムを持ってこなくてもB/Cセグなら充分に回生できる。これで燃費改善になる。タイヤからもっとも遠いところにあるため燃費改善効果は小さいが、ベルトでのロスと比較しても10kW程度がベストだ」