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ギガキャストは導入障壁を乗り越え、EV生産改革の鍵となるか

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ギガキャストは導入障壁を乗り越え、EV生産改革の鍵となるか

欧米や中国のEV生産で部分的に実用化が進むギガキャスト。

ギガキャストはアルミニウムダイカストでEVの車体構造を一体成形する技術だ。鋼板からアルミに置き換えることで軽量化できるほか、部品統合による一体化で高剛性やコスト削減に寄与する。

テスラは約70点の部品で構成していた車体骨格部品をギガキャストにより1点に置き換えた。自動車部品関連企業がギガキャスト関連事業に新規参入する動きも進んでいる。さらにトヨタもすでに導入を決定しており、日産は本年5月16日、この「ギガキャスト」を導入することを決定した。

各国各メーカーが熱い視線を送るギガキャストについて見る。

車体部品を一体成形し、製造コスト削減に繋げるギガキャスト

ギガキャスト技術はテスラが先駆けとなり、トヨタなど世界の自動車メーカーが採用に向けて動く。これは高温で溶かしたアルミニウム合金を高速、高圧で金型に流し込み、車体部品などを一体成形する技術だ。

複数の部品を加工、溶接して製造していた大型部品を、1工程のみで成形できるのがメリットで、鋼板より軽いアルミを使うため、軽量化にも貢献できる。

日産は従来の鉄のプレス加工からアルミ鋳造に置き換えることで、製造コスト削減を目指す。

トヨタのギガキャストによる効率化、生産ラインの作業者を20%、生産準備を行う作業者を15%削減の可能性

トヨタもギガキャストを採用している。2026年に投入する高級車ブランドレクサスの次世代EV「LF-ZC」からギガキャストを採用、EV生産改革を開始する。

これには車体を前、中央、後に3分割するモジュール(複合部品)構造を取り入れるが、ギガキャストは前部と後部に用いる予定だ。

試作では前部の91部品51工程と、後部の86部品33工程を、それぞれ1部品・1工程に集約することに成功している。

ギガキャストの導入により、組み立てや溶接を担う生産ラインの作業者を20%、生産準備を行う作業者を15%削減できると見込んでいる。

さらにライン自動化などを進めれば、半分まで減らせるとの考えもあるようだ。

加えて、部品の接合部分などに塗布する「シーラー材」の削減にも貢献できる。

従来の製造工程では、鉄板のつぎ目や細かな隙間にシーラー材を塗り、水やホコリが入るのを防止していた。

複数部品を一体化することにより、シーラー材は85%以上減らせる。

日産もついに導入決定したギガキャスト、アリアのコスト削減を支えるモジュラー生産に採用

日産は3月に発表した中期経営計画で、2026年度までにEVのコストを同社のSUV型EV「アリア」比で3割減らし、2030年度までにガソリン車と同等のコストを実現するという方針を発表した。

現時点で約600~800万円台のアリアが、300~400万円程度の価格帯で普及させることができれば売上に大きなインパクトが見込める。

この生産革新を支えるのがモジュラー生産だ。

通常自動車を生産するためには1本の長い製造ラインで内装品などを一つずつ取り付ける。これらを事前に「モジュール」にしておけば、最終組み立ての工程短縮や効率化につながる。

すなわち、モジュラー生産とは一まとまりとなっている部品単位である「モジュール」を組み立ててから完成車両を組み上げる新手法だ。

その一環として、モジュラー生産と親和性が高い「ギガキャスト」の導入に踏み切った。

大型のアルミ鋳造機を使用し、2027年度から一部のEV車種で活用する。最先端のEV製造技術を集めたイギリス工場などから順次導入を予定している。

ギガキャストのような射出成型に用いられる設備の能力は、金型を締め付ける力(型締め力)で示される。

日産はテスラなどが採用している型締め力6,000t級の設備を導入する計画を明らかにしている。

まずは車体の骨格となるフレームの後部部分で導入する予定だ。

テスラはすでに車体前部と後部をギガキャストで製造しており、トヨタも前部、後部をそれぞれ一体成形するとのことだが、現時点での日産は一部導入に留め、材料や製法などに応じて適材適所で採用する方針だ。

中国勢もギガキャストに積極参加。各社良好な数値を創出

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