激化する中国電池価格競争に疲弊する市場。鍵となるのは車の付加価値向上か
車載電池の価格が急落している。
特に影響が大きいと考えられるのは、急成長を続ける中国の車載電池業界。
というのも、中国のリン酸鉄系リチウムイオン(LFP)電池の価格が、2023年の世界平均の約半値にまで下がってきているのだ。そうなると強制的に価格競争が始まる。
調査会社ブルームバーグNEF(BNEF)が報告した「Electric Vehicle Outlook 2024」によると、2024年度1〜4月の中国のLFP電池セルの価格は1kWhあたり53ドル。対する2023年通年のLFPの世界平均は同95ドルとなっており、三元系などほかの化学組成のリチウムイオン電池セルの2023年の世界平均は同107ドルだったことから考えると約半値だ。
この状況に大手ですら利益が出ず疲弊している。このまま価格競争が続けば淘汰されるプレイヤーが続出するかもしれない。
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現在LFP電池を大量生産できるのはほぼ中国企業のみという現状
2024年現在、LFP電池を大量生産できるのは中国企業だけと言っていい。その背景として、LFP電池は中国国外では特許料や特許侵害リスクに抵触する懸念がある。2023年にこの制限は解除されたが、それまで開発・生産は中国域内に限られていた。2023年の制限解除を受け韓国の電池メーカー各社はLFPの開発・製造の強化を表明したが、量産開始まではまだまだ時間がかかりそうだ。
中国の電池王者CATLは2024年に高性能なLFP電池を1kWh60ドル以下で自動車メーカーに納入する予定だという。LFP電池のコストは110~124ドルだったが、昨年8月までに83ドルまで低下している。
価格破壊とも言える低価格を一般化することは難しいかもしれないが、もしも大量購入や長期コミットを前提にした固定価格契約等が締結できれば資源サプライヤーとしても計画的で安定的な資源開発が可能になる。