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わずか0.03秒!エアバッグが開く一瞬をハイスピードカメラで撮影し3Dモデル動画化|世界初・フォトロンのハイスピードボリュメトリックキャプチャ(HSVC)

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わずか0.03秒!エアバッグが開く一瞬をハイスピードカメラで撮影し3Dモデル動画化|世界初・フォトロンのハイスピードボリュメトリックキャプチャ(HSVC)

フォトロン社はIMAGICA GROUPのグループ会社であり、画像処理に特化したハードウェア、ソフトウェアの開発や製造を行っている会社だ。同社は昨年、得意のハイスピードカメラと映像処理技術で高速現象を3Dモデル動画化するという世界初の技術「High Speed Volumetric Capture ハイスピードボリュメトリックキャプチャ」(HSVC)を利用したサービスをスタートした。いったい「HSVC」とはどんなものなのか、どんなことに役立つのかを探ってみよう。 

TEXT:那須野明彦

エアバッグ開発のコスト・時間を大幅にカットする「HSVC」

近年、自動車に搭載されるエアバッグは運転席や助手席用だけではない。サイドエアバッグにカーテンエアバッグ、ニーエアバッグやシートエアバッグ、さらには後席センターエアバッグや歩行者保護用エアバッグなどが採用されており、1台の車に搭載されるエアバッグ搭載数はますます増加している。

加えて、車種によってはエアバッグの形状や展開方法に違いがあり、設計には非常に高度な技術が求められる。さらに、当然だが時間もかかる。エアバッグの開発にはCAE技術(Computer Aided Engineering)が用いられているのだが、点火からわずか0.03秒で一気に展開をする過程を、CAEによるシミュレーションだけで正確に再現することは簡単ではない。

そのため、エアバッグの設計では多数の条件分岐を行い、膨大な時間をかけてシミュレーションを行っている。さらに、結果が正しいかを比較するために、エアバッグの展開実験が繰り返し行われているのだ。そして、前述の通り一台の車に搭載されるエアバッグは1種類ではない。エアバッグ種類の数だけシミュレーションと実験を繰り返す必要があるのである。

時間もコストも膨大にかかっていたエアバッグの開発に大きく役立つ革新的な技術が、昨年発表された「ハイスピードボリュメトリックキャプチャ(HSVC)」なのだ。

HSVCとはどのような技術なのか

この聞き慣れない“ハイスピードボリュメトリックキャプチャ(HSVC)”を説明する前に、大元の技術である「ボリュメトリックキャプチャ」を簡単に説明しよう。ボリュメトリックキャプチャは、人やモノ、空間などを360°ぐるっとカメラで囲み、同時に様々な方向から撮影を行ってデジタル処理を施し、自由視点表現が可能な3Dデータに再構成するというもの。

おそらくスポーツ中継やミュージックビデオなどで、その映像を見たことがあるのではないだろうか。フォトロンの「HSVC」は、それをさらに大きく進化させたものと考えればいいだろう。

最大の違いは、撮影に使用するすべてのカメラが “ハイスピードカメラ”であること。通常、ボリュメトリックキャプチャは静止画だが、「HSVC」は数十台のハイスピードカメラで完全な同期撮影を行い、そのデータを張り合わせて3Dモデル動画データを作成するのだ。

ハイスピードカメラを使い360°全方位から一瞬の現象を動画で記録する

エアバッグが一瞬でどう展開するかを3Dモデル動画で可視化

ハイスピードカメラを使うことで、通常のカメラでは捉えきれない一瞬を切り取れる。エアバッグが0.03秒で展開していく一連の動きを、1,000コマ/秒というスロー映像によって、死角なく可視化することが可能だ。その高速の現象が、スーパースロー空間で自由な視点から計測できる3Dモデル動画として再構築されるのが「HSVC」なのだ。速すぎて捉えられなかったり、これまでは見えなかった部分の情報までも、CAEのシミュレーションに反映できる。

ハイスピードカメラで撮影したスロー動画から、動的な3次元形状を作成する
3Dモデル動画ではエアバッグ展開の過程が全方位3Dで自由に確認できる
著者
那須野明彦

1970年東京生まれ。趣味はバイクとプラモ。自動車専門誌、モノ情報誌の編集者を経て、2008年にフリーのライター・編集者として独立。自動車専門誌ではカーグッズやカーナビ、オーディオなどのインプレ記事を数多く手がける。現在は企業のオウンドメディア、自動車コラム、カーグッズ紹介記事、DIY書籍、DIYのノウハウコンテンツなどを執筆。

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