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2001年初めに神奈川大学 新中教授が挑んだ「ST-EV新1号」開発の全貌に迫る|センサレス・トランスミッションレスEVの革新と挑戦の記録 - 前編

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2001年初めに神奈川大学 新中教授が挑んだ「ST-EV新1号」開発の全貌に迫る|センサレス・トランスミッションレスEVの革新と挑戦の記録 - 前編

EVやHEVといった次世代モビリティの共通技術として重要なのがモータ駆動制御である。神奈川大学は2001年初め、モータ駆動制御技術を駆使し「センサ・トランスミッション」不要の電気自動車を開発した。6年にも及ぶ研究と試行錯誤の末に実現した「センサレス駆動制御システム」は、日本初となる快挙として大きな話題となり、多くのメディアでも取り上げられた。神奈川大学工学部の挑戦を追うべく、神奈川大学工学部名誉教授の新中新二氏のもとへ足を運んだ。

TEXT:石原健児(画像は神奈川大学工学部 新中名誉教授資料より)

センサレス技術の革新「モータ駆動の可能性を実証したい」

神奈川大学工学部が開発した2台の電気自動車

神奈川大学工学部名誉教授の新中新二氏は、自衛隊、防衛庁、防衛大学校、民間企業での経験を経て1996年から神奈川大学 工学部・工学研究科 教授に就任した。専門は制御工学、電力系統連系、信号処理など多岐にわたり、特にモータドライブ工学という新しい分野を切り開いてきた。これまで執筆した書籍の総ページ数は4,000頁にのぼる。

神奈川大学工学部名誉教授の新中新二氏

モータドライブ工学研究の一環として、新中氏が1998年から開始したのが電気自動車の開発だ。当時から電気をエネルギーとしたモータ駆動の電気自動車にモビリティの未来を感じていた新中氏。「モータはエンジンよりも広い範囲で動作させることができ、エンジン開発時の試験装置としても使用されています。このため、モータで直接車両を動かせば、変速機が不要になります。その原理を活かせないかと考えたのです」

また、従来のモータ制御方法である「ベクトル制御法」では、モータ回転子の位置や回転速度を計測するための速度・位置センサーが必要だった。しかし、こうしたセンサ装着には重量・コストの増加というデメリットがつきまとう。加えてセンサはデリケートで故障する可能性も少なくない。

もし「センサレス、トランスミッションレス」EVの開発が成功すれば、モータの力をこれまで以上に引き出すことができる。また、トランスミッションやセンサが不要になれば、車重の軽減や製造コスト削減も期待できると新中氏は考えた。目指したのは「トランスミッション」「モータへの速度・位置センサの装着を必要としない」電気自動車「ST-EV(Sensor-Iess & Transmissionless ElectricVehicle)」の開発だ。最終目標は車検を経てナンバーを取得し、公道走行できる車両の開発であり、車両名を「ST-EV新1号」と名付けた。開発ではセンサレス技術の検証、回生ブレーキ・油圧ブレーキの比較も目標に加えた。

「ST-EV新1号」の開発は既存技術を活用し4つのフェーズで進行

著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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