2001年初めに神奈川大学 新中教授が挑んだ「ST-EV新1号」開発の全貌に迫る|センサレス・トランスミッションレスEVの革新と挑戦の記録 - 後編
EVやHEVといった次世代モビリティの共通技術として重要なのがモータ駆動制御である。神奈川大学は2001年初め、モータ駆動制御技術を駆使し「センサ・トランスミッション」不要の電気自動車を開発した。6年にも及ぶ研究と試行錯誤の末に実現した「センサレス駆動制御システム」は、日本初となる快挙として大きな話題となり、多くのメディアでも取り上げられた。神奈川大学工学部の挑戦を追うべく、神奈川大学工学部名誉教授の新中新二氏のもとへ足を運んだ。
TEXT:石原健児(画像は神奈川大学工学部 新中名誉教授資料より)
実車装備し試験走行で理論を実証
車体が完成し「Phase4」ではいよいよ走行実験に移った。走行試験は「平坦加速」「登坂」「坂道発進」の3種類を実施。性能・特性の評価は比較法を利用し実効8,000(p/r)の速度情報を利用した滑り周波数形ベクトル制御法との比較を行った。
提示データは、十分な安全を見込み150%定格、30(秒)の条件下でグランド(直線約100m)および周辺エリアで取得したものだ。神奈川大学は丘の上にあるため、坂道発進の試験場所に事欠かなかった。試験走行中、新中氏は必要に応じパラメータのチューニングを行った。
平坦加速テストでは、停止状態から50m通過に要する時間はセンサ有り9.78 秒に対し、センサレスは9.73 秒。停止状態から50m通過時の速度はセンサ有り29kmに対し、センサレス30kmといずれも上回った。
登坂テストでは、最大15%勾配の坂道を利用してゼロ速から登坂時間を比較測定。センサ有り19.16秒に対し、センサレス18.97秒とこちらも数値が良い。坂道発進テストでもセンサ有りの発進不可に対し、センサレスは問題なく発進できる。全ての走行実験でセンサレスの優位性が明らかになった。