プロテリアル、EV非接触充電システム向け磁気シート・磁気シートパネルを開発。薄肉軽量化を実現
プロテリアルは8月29日、電気自動車(EV)車載非接触充電システム用に、ナノ結晶軟磁性材料「ファインメット」を素材とした磁気シートと磁気シートパネル「MS-HiQシリーズ」を開発したと発表した。
非接触充電は、電源コード不要で充電できる利点を生かし、ペースメーカーなどの医療機器やスマートフォンに採用されている仕組みで、最近ではEVに給電する技術として注目されている。2020年に駐車中の利用を想定した車載非接触充電システム規格「SAE J2954」が制定されるなど、実用化に向けた検討が本格化している中、有線の充電システムと比べて効率が低いことが課題の1つとなっている。
非接触充電システムの効率を向上させるためには、損失係数の逆数となる品質係数Qが高いコイル構成にする必要があり、Qが高いほど損失が小さく、効率的になる。シールド(※1)とバックヨーク(※2)の機能を持つ磁気シートを、コイル背面(非接触充電部の裏側)に配置することで有効となる。非接触充電システムの電力容量は、携帯電話の20W以内に対し、EV向けは3~11kWと非常に大きく、磁気シートとして磁性セラミックス「フェライト」を使用することで、サイズや厚みを増やす開発が主流となっている。
同社は、車載用途においてもファインメットの特長を生かせると考え、EV車載非接触充電システム用磁気シートの開発に着手し、非接触充電システムの高Q化に関して以下の2つの独自技術を開発した。
1.磁気シートを構成する材料「ファインメットリボン」の熱処理時、リボン長手方向に張力をかけながら異方性を持たせる透磁率制御を行い、リボンを使用して形成した磁気シートを適用することで、非接触充電システムのQ値を改善できる技術
2.1の技術により形成した磁気シート「MS-HiQ」を切断し、リボンの長手方向と磁力線の流れる方向が一致するよう放射状に配置した磁気シートパネルを形成することで、パネルを適用した非接触充電システムを高Q化できる技術
非接触充電システムのコイル背面にフェライトを配置する場合と比較して、MS-HiQを放射状に4つ配置した磁気シートパネルで約2分の1の厚さ、8つを配置した場合は約3分の1の厚さでほぼ同等のQを得られ、大幅な薄肉軽量化を実現できることを確認(※3)したという。
今回開発したMS-HiQシリーズは、さまざまな用途に適用できるよう、リボン層数や外形寸法、両面テープなどの仕様が選択できる。同社は、同シリーズがEV車載非接触充電システムに採用されることで高効率や小型軽量化に貢献し、非接触充電システムやEVの普及につながると見込む。
※1:電磁ノイズが入るのを防ぐことで、磁界、磁束への悪影響を防ぐ機能
※2:磁界、磁束の発散を防止する機能
※3:同社試験値による。試験条件=FMシート60x60mm、コイル(Ls=3.5μH、Rs=28mΩ@85kHz/10mA、Φ50mm)