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東芝、小型化・世界最高精度を両立した慣性センサーモジュール」と、同モジュールを用いた「可搬型ジャイロコンパス」を開発。GPS範囲外でもモビリティの適切な運転を支援

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東芝、小型化・世界最高精度を両立した慣性センサーモジュール」と、同モジュールを用いた「可搬型ジャイロコンパス」を開発。GPS範囲外でもモビリティの適切な運転を支援

東芝は、物体の動きや位置を検出する慣性計測装置のキーパーツである慣性センサーについて、小型化と世界最高レベルの精度を両立した「慣性センサーモジュール」の開発に成功し、東芝電波プロダクツは、東芝の開発技術を応用し、持ち運び可能なサイズの「ジャイロコンパス」を開発したことが発表された。両社はこれらの技術の詳細を、9月1日~4日にハンガリーで開催される、センサーやMEMSの分野で最も権威のある欧州学会のひとつであるEUROSENSORS XXXVIにて発表する。

概要

慣性センサーは、物体の動きや姿勢を検出するためのセンサーで、GPS等の電波が届かないビル陰や水中、暗くてカメラで対応できないトンネルや屋内暗所などでも物体の動きや姿勢を正確に検出することができる。モビリティの自動化の進展に伴い、移動ロボットやドローンへの搭載などその利用用途は拡大しているが、小型のモビリティにも搭載できるコンパクトなセンサーは精度が十分ではないという課題があった。

今回、東芝が開発した慣性センサーモジュールは、独自のMEMS技術※1 を活用し小型化しつつ、ジャイロセンサーは0.01dph※2 以下、加速度センサーは1µG※3 以下のバイアス安定性※4 を実現し、ジャイロセンサーと加速度センサーいずれも、小型モジュールとしては世界最高レベルの精度を達成。

高精度な慣性計測装置は「ナビゲーショングレード」と呼ばれ、航空機に搭載すれば太平洋航路をGPSなしで飛行可能な精度とされている。本技術の活用により、どのような環境においてもモビリティが自己の動きや位置を高精度に推定することができ、インフラ点検の無人化や完全自動運転の実現に貢献する。

本技術の特徴

東芝が開発した慣性センサーモジュール

東芝は以前より慣性センサーの研究開発を進めており、2020年には独自のMEMS技術を用いて、小型のジャイロセンサーモジュールの開発に成功している。今回、開発された慣性センサーモジュールでは、加速度センサーも小型化。また、ナビゲーショングレードを実現するにあたり、ジャイロセンサーと加速度センサーに求められる精度は、それぞれ0.01dph以下、1µG以下とされていたが、今回開発されたセンサーは、いずれもその要求仕様を満たしており、小型モジュールとしては世界最高レベルの精度を達成する。

一般的な慣性センサーは、回転角速度や加速度の入力に比例した錘の動きの変位を元に計測を行っていたが、今回採用された方式では、そのために犠牲にしていた測定レンジの問題を解消し、影響を受けることなく精度が大幅に向上されている。今般開発された慣性センサーモジュールが慣性計測装置に搭載されれば、GPS等の電波が届かない場所や、暗くてカメラでの対応が困難なトンネルや屋内暗所でも、ドローンや車、移動ロボットなどの小型モビリティが正確に自己の動きや位置を推定することができ、インフラ点検や工場の無人化、完全自動運転の実現に貢献する。

東芝電波プロダクツが「ジャイロコンパス」を開発

東芝電波プロダクツが試作した可搬型ジャイロコンパス

また、東芝電波プロダクツは、東芝が開発した「ジャイロセンサー」のモジュールを用いて、持ち運び可能なサイズのジャイロコンパスを開発。ジャイロコンパスとは、地磁気を利用する一般的な磁気コンパス(測定精度:数°程度)と異なり、ジャイロセンサーを用いて地球の自転を計測することで地磁気等に頼らずに真北の方位を正確に測定する装置のこと。

現在市販されているもののうち、精度が高い機械式・光学式のジャイロセンサーを用いたものは数十リットル以上のサイズで持ち運びが難しい一方、持ち運び可能なコンパクトなサイズ(約4リットル、Φ180mm x 高さ161.6mm)で開発され、高精度な方位角測定が可能とされている。

その測定精度は世界最高精度で1km先で1m以内の誤差となる精度に相当。防衛分野でレーダーなどの設置方向を決める際にも用いることができるほか、可搬サイズであることを生かし、正確性が求められる土木工事における測量や地中掘削における方角推定など、幅広い場面での活用が見込まれている。

今後の展望

今後、東芝は、搭載物の軽さが重視される飛翔体や空中ドローンなどに対しても、飛行に影響を与えることなく搭載できる10cc級の超小型サイズ(ペットボトルキャップの大きさ)の慣性センサーモジュールの実現に向け、さらなる小型化を目指し研究開発を進めていく。これにより、防衛・民生の幅広い市場への展開が目指される。また、東芝電波プロダクツは、今般開発したジャイロコンパスについて、2026年度以降の製品化を目指す。

※1 Micro Electro Mechanical Systemsの略で、半導体加工技術で作成した、微細な機械構造を持つ電子部品もしくはシステム。
※2 degree per hourの略で1時間あたりの角度変化を表す単位。0.01dphは1時間で0.01°しかずれないことを差す。
※3 重力加速度Gの100万分の1を表す単位。1µGは高感度の地震計と同等レベルの精度。
※4 センサーの性能を評価するための指標。センサーの出力がどれだけ安定しているかを示しており、値が小さいほど高精度。
※5 体積200cc以下の小型センサーモジュールについて世界最高レベルの精度。2024年8月東芝調べ。

著者
Motor Fan illustrated

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