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TDK AI搭載センサーモジュール「i3 Micro Module」で"人間が感知できない"異常も検知。自動車部品製造AI活用の新基準|第3回 Factory Innovation Week [秋]

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TDK AI搭載センサーモジュール「i3 Micro Module」で"人間が感知できない"異常も検知。自動車部品製造AI活用の新基準|第3回 Factory Innovation Week [秋]

自動車部品の製造現場では、製造機械が故障すれば納期の遅延や生産効率の低下といった重大な問題が発生する。そのため、機械の定期的なメンテナンスは不可欠である。しかし、人間の感覚では機械の故障の予兆を把握することは難しい。


TDK株式会社が開発した「i3 Micro Module」は、AIを搭載したセンサーモジュールだ。これにより、人間には感知できない機械の異常を効率的に検出できる。機械の状態を可視化し、ダウンタイムを最小限に抑えながら、設備寿命を延ばすことが可能となる。

今回は、TDK株式会社の次世代製品&ソリューションズグループの伊藤俊貴氏に「i3 Micro Module」の特徴や活用方法について話を伺った。

TEXT&PHOTO:中辻 タカオ(Takao Nakatsuji)
主催:RX Japan株式会社
i3 Micro Moduleホームページ:https://product.tdk.com/ja/products/sensor/i3sensing/cbm/index.html

自動車部品の製造現場で異常を感知する「i3 Micro Module」

i3 Micro Moduleは、工場で使用される機械の故障状態を検出し、事前にその兆候を知らせるセンサーモジュールである。主に、自動車部品の製造現場で使用される機械をターゲットとしており、製造工場において非常に有用だ。

「i3 Micro Module」の最大の特徴は、人間の目や耳では捉えにくい異常を早期に検知できることにある。従来は、機械から異常な音が聞こえたり、外観に変化が現れたりして初めて異常に気付くことが多かった。

「しかし、i3 Micro Moduleを使用すれば、そうした明確な兆候が現れる前に異常を検知できます。これにより、突発的な機械の故障を大幅に減らし、生産停止のダウンタイムを抑制することが可能です。また、故障箇所を事前にメンテナンスすることで、設備自体の寿命を延ばすことにつながります。」と伊藤氏は語る。

エッジAI・ワイヤレスメッシュネットワーク・センシング技術が異常の早期検知に貢献

i3 Micro Moduleには、大きく分けて3つの特徴がある。

まず一つ目はエッジAIだ。これは、ネットワークの端末機器にAIを直接搭載する技術を指す。i3 Micro Moduleは自社製のAIを内蔵しているため、リアルタイムでのデータ処理が可能だ。通常、センサーで取得したデータは全てクラウドにアップロードして解析されるが、i3 Micro ModuleではAIが内部で動作し、機械の状態が正常か異常かをその場で即時に判断する。これにより、リアルタイムでの監視が可能となり、ネットワークの負荷も軽減される。

二つ目はワイヤレスメッシュネットワークだ。この技術により、i複数のi3 Micro Moduleが相互に接続して通信できる。従来のBluetooth技術とは異なり、無線通信状態が悪化したり途切れたりした場合でも、自動的に再接続や通信経路の修正ができるため信頼性が高い。さらに、新しいモジュールを追加する際も、電源を入れるだけで自動的にネットワークに接続されるため、拡張性が高く、利便性に優れているのだ。通信範囲はおよそ40メートルで、ワイヤレスメッシュネットワークの他にBluetoothやUSBにも対応しているため、様々なニーズや状況に柔軟に対応できる。

最後に三つ目は高性能なセンシング技術である。搭載されているセンサーはTDKが開発した産業用グレードの高いもので、機械の振動特性を正確に取得できる。これにより、微細な異常も見逃さず、人間の目や耳では感知できないような小さな変化も捉え、異常の早期検知に大きく貢献するのだ。

実演で見るi3 Micro Moduleの異常検知機能とデータ解析

これがi3 Micro Moduleのデモ機だ。装置内の横に伸びるシャフトが回転している。シャフトの回転に伴う振動に異常がないか、i3 Micro Moduleに監視されている。上の写真では、シャフトは1000rpmで回転しており、異常な振動は確認できなかった。i3 Micro ModuleのLEDは緑色に点灯し、正常な状態を示している。

これは、シャフトの回転を2000rpmに増加させたところである。i3 Micro Moduleが異常な振動を検知したため、LEDは赤く点灯した。
著者
中辻タカオ

ソフトウェア技術者と兼業のライター。
1999年に慶應義塾大学環境情報学部卒、株式会社日立製作所入社。OSの開発やサポートに従事。2019年に日立製作所を退職してからは、ソフトウェアの開発やプログラミング講師、Webライターをしている。仕事の合間にはルービックキューブをいじって頭をリセットさせるのがルーティーン。実は二輪免許に興味がある今日このごろ。

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