日本特殊陶業・産総研、サマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)永久磁石の高密度化技術を開発。EV 用などの高効率モーターへの展開に期待
Niterra グループ 日本特殊陶業と産業技術総合研究所は「日本特殊陶業-産総研カーボンニュートラル先進無機材料連携研究ラボ」において、新規焼結助剤を用いることでサマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)系焼結磁石※1 を高密度化および高性能化できる技術を開発したことを発表した。
Sm2Fe17N3 磁石は高い磁石特性を示し、かつネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)磁石※2 を上回る耐熱性を示すことから、ポスト Nd-Fe-B 磁石として期待されている。一方、磁石性能を向上させるためには高温焼結で高密度の微構造組織を形成する必要があるが、Sm2Fe17N3 は比較的低温で分解するために、高密度化が困難だった。これまで、融点の低い(420 ℃)亜鉛(Zn)を焼結助剤に用いて低温で焼結する手法などが検討されてきたものの、高密度化しても重要な性能指標である磁化※3 が下がってしまうという問題があった。
本研究では、Sm2Fe17N3 磁石で磁化を下げずに緻密化効果を得るために、焼結助剤として周期表第二族※4 に属する元素(マグネシウム、カルシウムなど)を含有する合金が開発された。これにより、磁化低下を最小限に抑えながら Sm2Fe17N3 磁石を高密度化できるようになり、将来的に耐熱性が要求される電気自動車などのモーター用磁石への展開が期待されている。
なお、この成果は 2024 年 9 月 19 日に大阪大学豊中キャンパスで開催される日本金属学会秋期講演大会で発表される。また、2024 年 10 月 11 日に名古屋市で開催される産総研中部センターおよびAIST Solutions 主催の「未来モビリティ材料」共創フェアにて発表が行われる。
※1 サマリウム-鉄-窒素(Sm2Fe17N3)系焼結磁石
Sm2Fe17N3 化合物を微粉化し、焼結した磁石。焼結密度を向上させることが難しい、難焼結材料として知られている。
※2 ネオジム-鉄-ホウ素(Nd-Fe-B)磁石
Nd2Fe14B 化合物を主相とした、現在最もエネルギー積が高い磁石。
※3 磁化
単位体積あたりの磁気モーメントのこと。磁石のくっつく強さの指標。
※4 周期表第二族
ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムなどの元素を総称して「周期表第二族」の元素と呼ぶ。