三菱ふそうトラック・バス、EVバッテリー「材料回収」の実証設備建設を決定。シンガポール・T2M社と共同で、EVバッテリーを正負極材・電解質として回収する実証プラントを建設
三菱ふそうトラック・バス(以下、MFTBC)は、シンガポールのスタートアップ企業・True 2 Materials Pte, Ltd (以下、T2M社)と共同で、電気自動車(EV)の使用済みバッテリーの「材料回収」を行う実証プラントを、川崎製作所構内に設置することを決定したことを発表した。実証プラントを用い、使用済みEVバッテリーをバッテリーセルメーカーがそのまま使用できるアノード・カソード(正負極材)※ および電解質として回収する実証試験が、2025年初頭に実施される。
世界的な脱炭素の流れによるEV需要の高まりを受け、今後使用済みEVバッテリーが急増していくと予想されている。使用済みEVバッテリーの処理には、バッテリーのまま他の用途に再利用する(二次利用)ほか、分解して原材料や部材にリサイクルする方法などが考えられる。
MFTBCは本実証試験を通じ、MFTBCの電気小型トラック「eCanter」などEVトラックやEV乗用車の使用済みバッテリーを、追加の処理が不要でハイグレードな配合材料として再利用する目的で正負極材および電解質として回収する事業を検討する。
まずは、日本国内での事業化が目指され、将来的には海外への展開の可能性も検討される。バッテリーがEVにおいて大きな価値を占める中、今後需要が急増すると見込まれるEVバッテリーのリサイクルニーズへの対応によって、貴重資源の有効活用、効率的な再処理プロセスの開発によるバッテリー資源価値の最大化、それによるEVのトータルコストの低減が目指される。これらにより、MFTBCは顧客が車両の電動化を推進しやすい環境の整備に努めていく。
T2M社は使用済み・廃棄バッテリーを、正負極材・電解質に再生する技術「トータルマテリアルリカバリー (TMR)」プロセスを開発している。TMRでは、従来の乾式精錬・湿式精錬とは異なる、ナノレベルの分子技術を活用しており、原料ロスを最小限に抑えるとともに資源価値を維持しつつ、環境負荷の低い方法でバッテリーを材料に復元することができる。EVバッテリーの資源を最大99.9%と従来の方法よりも高い割合で回収することが可能で、原料ロスを極限まで抑制することで、限られた資源の有効活用と、バッテリーの資源価値の最大化が実現される。また、TMRはCO₂(二酸化炭素)の排出量をはじめ、分解処理による環境負荷を低減します。さらに、一般的にバッテリーのリサイクルプロセスにかかるコストの中で4分の3近くを占めるとされる金属処理についても、大幅にコストが低減できる見込みとされている。