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直6エンジン縦置きベースのマイルドハイブリッドとPHEVシステム |マツダ ラージ商品群を振り返る

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直6エンジン縦置きベースのマイルドハイブリッドとPHEVシステム |マツダ ラージ商品群を振り返る

脱炭素化に向けた現実的なソリューションとして、ハイブリッドが再び注目されている。そこで、マツダの直列6気筒エンジン縦置きプラットフォームをベースとしたマイルドハイブリッドとプラグインハイブリッドを、Motor Fan illustrated誌(187号)に掲載された過去の記事から改めて紹介する。美祢のテストコースでの開発車両への試乗機会に、設計思想についても問いかけたレポートである(情報は当時のもの)。

TEXT:世良耕太/鈴木慎一/MFi FIGURE:MAZDA PHOTO:MAZDA/MFi

SPECIFICATIONS SKYACTIV-D 3.3|□シリンダー配列 : 直列6気筒ディーゼル □排気量 : 3283cc □内径×行程 : 86.0mm×94.2mm □圧縮比 : 15.2 □最高出力* : 187kW/3750rpm □最大トルク* : 550Nm/1500-2400rpm □給気方式 : ターボチャージャー □カム配置 : DOHC □ブロック材 : アルミ合金 □吸気弁/排気弁数 : 2/2 □バルブ駆動方式 : ロッカーアーム □燃料噴射方式 : DI □VVT/VVL : ×/× * 日本仕様社内測定値

1:さまざまな検討を重ねた結論としての大排気量多気筒化

SKYACTIV-D 3.3|直列6気筒のラージ群専用DE
マツダはラージ商品群に合わせて3.3L直列6気筒ディーゼルエンジンを新開発した。(ラージ商品群最軽量クラスとなる)CX-60のディーゼルエンジン搭載車は車両重量が約1900kgとなる。この車重でマツダが掲げる「意のままの走り」を実現するには、最大トルクが550Nm必要だと算出した。ただ必要なトルクを確保するだけではなく、燃費と排ガス性能も高次元で両立するのに必要な排気量は3.3Lだと結論づけた。排気量が3.3Lに決まったので、最適な気筒数は「4」ではなく「6」になった。先に6気筒ありきではない。もっと小さな排気量で550Nmを発生させることは可能だが、余剰の空気を燃費と排ガス性能に振り向けるため、あえて大きな排気量(=空気量)を選択した。

なぜ3.3Lなのか |従来の2.2Lと同じBMEP(25.8bar)を発生させれば、3.3Lで678Nmを発生させることは計算上可能。だが、550Nmに抑え、余った空気を燃費とNOx低減のために使う。大量EGRを行なったうえで早い時期に燃焼すると空気と燃料がよく混ざり、NOxがほとんど発生しないPCI燃焼が実現できる。実用負荷域でPCI燃焼できる排気量の下限が3.3Lだった。
DCPCIという新手法 |PCI燃焼の領域を広げる新技術がDCPCI(Distribution Controlled – Partially Premixed Compression Ignition:空間制御予混合燃焼)だ。2段エッグ燃焼室とし、一発目は燃料を上下に分割して噴射。真ん中にできた空間に次の燃料を噴射することで噴霧の干渉を避け、短い期間でリーンな混合気をよく混ぜる技術。DCPCI燃焼での噴射は5回。

2:マツダスパイラルを高めていくためのメカニカルレイアウト

>縦置きプラットフォーム
世界各地のニーズ(とくに上級志向の)や規制を考慮し、48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッド、直列6気筒のガソリンエンジンとディーゼルエンジンに対応が可能なプラットフォームについて検討した結果、選択したのが縦置きプラットフォームだった。意のままに運転できるダイナミクスを考えても、(横置きではなく)縦置きが妥当との判断である。前後重量配分を最適化し、4輪にかかる重量を均等化できるのが最大のメリット。縦置きレイアウトなので主駆動輪はリヤになるが、新プラットフォームはフロントにも駆動力を配分するAWDが基本となる。人の操作とクルマの挙動の時間変化がシンクロするよう、力が伝達する下流(ステアリング<フロントサス<リヤサス)ほど剛性を高めた。

図は4気筒ガソリンエンジンと高出力モーターを組み合わせたPHEVの例。エンジンの前端が前車軸より後ろにあるのがわかる。重量物を重心点近くに集約し、慣性マスを小さくして4輪の力を遅れなく曲がる運動に変換させる考え。

3:世界でも類を見ない湿式多板クラッチ式ステップAT その理由とは

著者
Motor Fan illustrated

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http://motorfan-i.com/

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