レゾナック、仏ソイテックとSiCパワー半導体向け貼り合わせ基板の共同開発契約締結。8インチSiCウェハーの生産性向上目指す
レゾナックは9月24日、フランスのSoitec(ソイテック)と、パワー半導体に使用される200mm(8インチ)炭化ケイ素(SiC)エピタキシャルウェハー(以下、SiCエピウェハー)の材料となる8インチSiC貼り合わせ基板の共同開発契約を締結したと発表した。
レゾナックグループは、2023年1月に昭和電工グループと昭和電工マテリアルズグループ(旧日立化成グループ)が統合してできた新会社。ソイテックは、フランスのグローバル本社を拠点として半導体基板材料の開発・製造を展開している。
パワー半導体は、電動車(xEV)や産業機器などのパワーアプリケーションにおいて幅広い用途で採用され、今後さらなる市場規模の拡大が見込まれている。特に、SiCはシリコン(Si)に比べ、電力変換時の電力損失や熱の発生が少なく、省エネルギー化に貢献するため、需要が急拡大している。
一方で、SiCパワー半導体の主要材料となるSiC単結晶(※1)基板は、均一な結晶であることが求められ、その生産には、高度な技術が必要かつ結晶成長に時間を要することから、生産性向上が課題となっている。
レゾナックは、SiC単結晶基板にエピタキシャル層を成長させたSiCエピウェハーを生産しており、世界最高水準の品質として、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ているという。8インチの大口径化を進めており、サンプル出荷を開始している。
ソイテックは、SiC単結晶基板を加工し、その加工面をサポート基板となる多結晶(※2)SiCウェハーに貼り合わせ、単結晶基板を薄膜分割することで、1枚のSiC単結晶基板から複数の高品質SiCウェハーを生産する独自技術(SmartSiC技術)を保有している。
同技術は、生産性の向上に加え、SiCウェハー製造時のCO2排出量を最大70%削減できるため、環境負荷および、コスト面においてもメリットがある。貼り合わせ基板技術は、Siウェハーにおいて既に実用化されており、ソイテックは同技術実用化の知見を有している。
今回の共同開発において、レゾナックは、ソイテックにSiC単結晶を供給し、ソイテックは、その単結晶を使ってSiC張り合わせ基板を製造する。両社の共創により、8インチSiCウェハーの生産性を向上し、SiCエピウェハービジネスでのサプライチェーンの多様化を目指す。
※1:原子が規則正しく配列された結晶構造を持つ材料のこと。物理的特性が均一であり、単結晶の形成には、高度な製造技術が必要。
※2:多数の微小な結晶(粒)が集合した材料のこと。微小な粒の一つひとつが単結晶であり、多結晶はそれらの集合体。全体としての結晶構造はランダムで、製造が容易でコストが低いため、広範な用途で使用されている。