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実費予算は50万円。ハンドレッスと東京工科大学が産学連携で挑む"水素燃料電池4輪車"開発に迫る|JAPAN MOBILITY SHOW 2024

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実費予算は50万円。ハンドレッスと東京工科大学が産学連携で挑む"水素燃料電池4輪車"開発に迫る|JAPAN MOBILITY SHOW 2024

「モビリティの新たな技術導入には多額の費用がかかる」

そう考える方は少なくないだろう。しかし、2024年10月15日から18日、幕張メッセで行われたJAPAN MOBILITY SHOW 2024で、低予算で始動した水素燃料者開発を目指した産学連携の実例を目にすることができた。Hundredths株式会社と東京工科大学が手を組み、実費予算50万円で進められている水素燃料電池4輪車の開発について、東京工科大学大学院 荒井大地氏に、産学連携の現状と今後の目標をうかがった。

TEXT&PHOTO :石原健児
一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)

電動4輪カートを水素燃料モデルへ転換

コンパクトなベース車両

Hundredths(ハンドレッス:本社:長野県塩尻市)は、2018年に創業し2輪・4輪の電動モビリティの開発を行っている。2024年からは、電動4輪モビリティ「ChatKart」を水素燃料電池モデルへ転換する取り組みをスタート。水素燃料電池ユニットの開発は東京工科大学大学院が担当しており、産学連携でのプロジェクトとして進行中だ。

ブースで出迎えてくれた荒井 大地氏は工学研究科サステイナブル工学専攻 博士後期課程陸海空ロボティクス(福島)研究室に所属している。開発はHundredths側が車体を提供し、大学側が水素発電部を開発する。実証実験は2024年の8月から開始した。

水素燃料電池の開発目的は「電動バッテリー車の走行距離を補完すること」。具体的な活用シーンを荒井氏は語る。

「ChatKartの航続距離は約60km。水素ボンベ1本で10km程度走行できればと考えています。例えば電動モビリティ利用者が外出先で電欠を起こしたとき、市販の水素ボンベを利用し近くの充電施設まで移動できればいいですよね」

市販品を活用した開発の実費総額は50万円以内

水素発電部は「水素ボンベ」「減圧レギュレーター」「水素電池スタック(水素から電気を作り出す平板状セルの集合体)」「燃料電池コントローラー」で構成されている。「かかった実費費用は、水素ボンベが1本10数万円×2本、機器が約20万円、車輪の下に敷くローラーが約4万円で総額は40万円〜50万円ほどです。全て市販品で揃えたので開発費用を抑えることができました」と荒井氏。今回の取り組みは、低コストでありながら、実用化に向けた道筋が見えてきている。中小企業にも参入のハードルが低いといえよう。

中央が水素発電ユニット、右の黒い機器はポータブル電源

開始2か月で最大出力の6割以上を発電

2024年10月に実証実験は開始から2か月を迎え、システムの動作確認から発電の検証へと移った。水素を供給するタンクは「水素吸蔵合金」を充填している。1MPa(メガパスカル)という低圧で200Lの水素を供給できる仕様だ。総発電量は計測中ながら、水素発電部分は最高発電力100Wのところ63Wと最大出力の6割以上を達成している。

青いボンベの傍にあるのが減圧レギュレーター
著者
石原健児

取材ライター。
1966年東京生まれの北海道育ち。大学卒業後、イベント関連企業、不動産業を経て印刷業へ。勤務先のM&A・倒産をきっかけに2016年からライター業を始める。医療系WEB媒体、ビジネス誌「クオリタス」などで活動。医師、弁護士、企業経営者、エンドユーザーなどを対象に取材してきた。総取材人数はだいたい1500人。就学前までに自動車や転落事故で「九死に二生」位は得ていると思う。最近好きな言葉は「生きてるだけで丸儲け」。

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